スペシャルインタビュー
夜クラシックVol.42 郷古 廉・横坂 源・北村朋幹

~2026年11月27日(金) 「夜クラシックVol.42 郷古 廉・横坂 源・北村朋幹」~

郷古 廉(ヴァイオリン)/横坂 源(チェロ)/北村朋幹(ピアノ)
スペシャルインタビュー

実力派アーティストが数々の名曲を気さくなトークを交えながらお届けする室内楽シリーズ"夜クラシック"。
Vol.42に出演する郷古 廉さん(ヴァイオリン)、横坂 源さん(チェロ)、北村朋幹さん(ピアノ)に、
トリオとしての歩みや今回のプログラムについてお話を伺いました。

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ヴァイオリン

郷古 廉

Sunao Goko

ソリストとN響第1コンサートマスター、二刀流で音楽を極めるヴァイオリニスト。2013年ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリン・コンクール優勝ならびに聴衆賞・現代曲賞を受賞。現在、国内外で最も注目されている若手ヴァイオリニストのひとりである。1993年、宮城県多賀城市生まれ。2006年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門において史上最年少で優勝。2007年12月のデビュー以来、各地のオーケストラと共演。2017年より3年かけてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏するシリーズにも取り組んだ。これまでに勅使河原真実、ゲルハルト・ボッセ、辰巳明子、パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事。ジャン・ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコの各氏のマスタークラスを受ける。使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリ(Banat)。個人の所有者の厚意により貸与される。2019年第29回出光音楽賞受賞。2024年4月よりNHK交響楽団第1コンサートマスターに就任。2025年1月よりみやぎ絆大使に就任。

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チェロ

横坂 源

Gen Yokosaka

桐朋学園女子高等学校(男女共学)、同ソリストディプロマ・コースを経て、シュツットガルト国立音楽大学、フライブルク国立音楽大学にて学ぶ。全日本ビバホール・チェロコンクール第1位、2010年ミュンヘン国際音楽コンクール第2位。その他出光音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、ホテルオークラ音楽賞等多数受賞している。13歳でソリストデビュー。2020年、ドイツにてスヴィリドフ:チェロ協奏曲 『つばき』の新作委嘱・世界初演及び東京交響楽団と日本初演を行い、日本フィルハーモニー交響楽団とルグラン:チェロ協奏曲の日本初演を行った。2021年には東京都交響楽団とデュサパン:チェロ協奏曲『アウトスケイプ』の日本初演を果たし、2023年には野平一郎指揮「三善晃:チェロ協奏曲第2番『谺つり星』」に取り組むなど、目覚ましい躍進を続けている。録音は、新譜「R.シュトラウス&ラフマニノフ(ピアノ:沼沢淑音)」を含む3枚のアルバムをリリース。現在最も幅広い演奏活動を展開するチェリストの一人である。

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ピアノ

北村朋幹

Tomoki Kitamura

愛知県生まれ。浜松国際コンクール第3位、シドニー国際コンクール第5位、リーズ国際コンクール第5位、ボン・テレコム・ベートーヴェン国際コンクール第2位入賞。第3回東京音楽コンクールにおいて第1位ならびに審査員大賞(全部門共通)受賞以来、独自のプログラミング・センスで展開するソロリサイタルをはじめ、オーケストラとの共演、室内楽、古楽器による演奏活動を日本とヨーロッパ各地で定期的に行っている。録音は、2026年3月発売の新譜「アステリズム」を含む7タイトルのアルバムをフォンテックよりリリース。2021年録音の「ケージ プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード」は令和3年度(第76回)文化庁芸術祭賞 レコード部門 優秀賞を受賞。また2023年録音の「リスト 巡礼の年 全3年」ほかの成果が『美的にも知的にも余人を圧倒する音楽家の出現』と評価され、令和6年度(第75回)芸術選奨 音楽部門 文部科学大臣新人賞受賞。第22回佐治敬三賞受賞。東京藝術大学に入学後、2011年よりベルリン芸術大学ピアノ科で学び最優秀の成績で卒業。またフランクフルト音楽・舞台芸術大学では歴史的奏法の研究に取り組んだ。ベルリン在住。


取材・文:高坂はる香 写真:三浦興一

緊張感と楽しい時間のコントラストを持ちながら一緒に成長できる、貴重な仲間です

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―「夜クラ」ではそれぞれお馴染みの皆さんですが、お三方での登場は初めてです。長く共演を重ねていらっしゃいますね。

郷古 初共演は2018年でしたね。

北村 あの時は僕も20代で、楽しかったけどまだ少し人見知りしながらの演奏だった部分がありました。次にご一緒した2020年は時間を取って、寄り道みたいにいろいろ話をしながらリハーサルができて、その頃から定期的に共演するようになりました。

―お互い変化を感じますか?

郷古 もちろん、歳をとっていますから(笑)。共演の時間があく間、各人いろいろな経験をして、また会う時にそれを持ち寄っている感覚があります。口に出して話すことだけでなく2人の演奏から感じることもたくさんあって、すごく刺激的ですね。

横坂 最初の頃はお互いをつつき合いながらどうしたいのか言葉で伝え合っていたけど、リハーサルの時間の使い方も段々変わってきました。2人は言語化能力が高いから"直感星人"の僕からすると驚きの連続です。持っている理想は近いけど、そこに至る模索の仕方がそれぞれ違うので、それがすごくおもしろい。そのうえ最終的に出来上がったものをこれほど心から信じられる相手というのはなかなかいません。緊張感と楽しい時間のコントラストを持ちながら一緒に成長できる、貴重な仲間です。

北村 僕はこのトリオを"本部"みたいに思っているんです。それぞれ「サンダーバード」のようにあちこちに行って活動して、時々、どこにあるのかわからない秘密基地に帰ってくるような(笑)。
 だから、たとえば他の場所で取り組んでみて、消化不良だったレパートリーも、ここで3人でやってみて、やっと納得できるということもよくあります。やはり一番信頼している人たちですし、自分が思い描いていた姿とは違う仕上がりになっても、「それも良いな」と嬉しく思えるような場所。そういう関係性は、なかなか得られるものではありません。

リハーサルの理想のやり方の一つだと今も思っています

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―初めての出会いはいつですか?

郷古 横坂くんとは僕が18歳の頃に初めて会いました。当時の横坂くんはすごく尖っていましたね(笑)。

横坂 そんな時代もあったんですかね?(笑)

北村 僕もまだ19歳で、横坂くんはドイツ留学中でした。伊藤 恵先生から話だけ聞いていたから、実際に会えて、しかもフレンドリーに接してくれてすごく嬉しかったです。それで初めて室内楽で一緒に演奏したら、やっぱり尖りまくっていました。

横坂 恥ずかしくなってきた(笑)。

北村 でも、僕の中ではこれが今も印象に残るリハーサルのやり方なんです。彼の中にあるイメージを全部共有してくれるんだけど、そこにつまらない言葉を一つも使わない。「北ちゃん、ここはね、銀河鉄道の夜なんだよ!!」みたいに。そんなふうに自分の考えを誰かと共有して音楽を作ろうという人がいるんだ、と感じました。リハーサルの理想のやり方の一つだと今も思っています。

横坂 今はすぐ自分のパッケージを完成させて勝負しなければならない風潮があって、演奏家にとって大変な時代だと思いますが、当時の僕たちは、「自分たちはどうする?」と話し合いながらその時々で決めていくことで、音楽を本当に自分のものにできたと感じます。そうやって積み重ねてきた時間を通して、今すごくおもしろいところに来られたのでしょう。リハーサルで同じ地図を共有しておいて、本番は積み上げたものを土台に、その瞬間にしか生まれない音楽をつくることができる。すごくいいトリオだと思いますね、名前はないけど!

この編成だからこその表現が見つかると思います

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―プログラムはどのように選んだのでしょうか?

北村 「夜クラ」への出演は3回目ですが、毎回課題になるのが、最初に「月の光」を演奏すること。シリーズの決まり事として演奏しているように感じさせない自然な流れを作ろうと思い、すごく考えます。そんなとき廉くんが「プロコフィエフが合うんじゃない?」と言ってくれたんです。「5つのメロディ」は、もともとヴォカリーズ(歌詞を伴わずに母音のみで歌う歌唱法)として書かれている歌曲だから、メロディがとても曲線的で、フランスものやその後の武満作品とも合うと思います。
 2人は時々、そうやって感覚的に、これしかないような素晴らしいプログラムを提案してくれるんです。

横坂 武満作品は北村くんが提案してくれたもので、初めて演奏します。そこまでの作品からバトンを受け継いだあと、静的なところ、真っ白なところからスタートしてどんどん動いていくところが魅力の作品。そこからラヴェルの「ピアノ三重奏曲」につなぐ流れもとても自然で美しいと思います。

―後半は北村さんのソロによるエネスクから始まります。

北村 エネスクは音楽史の中でもトップクラスの天才で、彼でしかあり得ないような複雑さが、そのまま譜面にも音楽にも美しく表れています。「夜の鐘」は、機会があれば弾きたいすごくいい曲。ラヴェルとエネスクは同じ場所で勉強した時期があるというつながりもあり、休憩を挟んで取り上げるのもおもしろいかなと。

―そしてシェーンベルク「浄められた夜」が演奏されます。

北村 オリジナルは弦楽六重奏曲でピアニストは参加できませんから、憧れが強い曲でした。編曲したシュトイアーマンはシェーンベルクと長く共同作業をしていた人ですが、これはプライベートな集まりのために編曲されたものなので、シェーンベルクが一音一音慎重に選んで書いたオリジナルとはどうしても完成度が違うのが正直なところです。

横坂 オリジナルと後に編曲された弦楽合奏版でも印象が違うところ、今回はトリオという最小単位になるわけだから、作品が生み出すものはこれまで持ってきた印象と違うものになりそう。

郷古 この作品のおどろおどろしさって主にヴィオラから出るのですが、ピアノ三重奏だと当然ヴィオラはいません。弦楽器特有の音を保つ表現ができないピアノとのアンサンブルで、同じ表現をしようとすると難しいところもありますが、僕たちなら、この編成だからこその表現が見つかると思います。弦同士で合わせるのが難しいところをピアノ一人でやってもらう部分が結構あるんですけどね。

北村 六重奏の残りをピアノがやるなら4人分のはずなのに、実質5、6人分やるところがあって、弾けないところがあるくらい難しい(笑)。
 デーメルの詩は男女の対話によるものですが、低音と高音の弦楽器がメロディを交わすこの編曲は、ある意味分かりやすいかもしれません。ピアノは、そこにどのような背景を描くか、ということです。

―内容は、女性が男性に別の男のこどもを宿していると告白し、男性がそれを受け入れるという、なかなかヘビーなものですね。


北村
 デーメルの詩によってこれまでタブーとされてきたことが表現され、シェーンベルクは自分の音楽も解放されると感じたのではないでしょうか。実社会では普遍的で誰でも持ち得る感情が、芸術の世界では存在しないかのように扱われていた時代に、こういう形で表現されたのは大きなことだったと思います。

郷古 丁寧すぎるくらい丁寧に曲を書いていますよね。シェーンベルクって本当に真面目な人なんだろうと思う。

北村 真面目であるが故に、デーメルの詩に出てくるような、官能というか、人間の本能的な、退廃的な部分に惹かれていたのでしょう。しかもそれと同時に、彼の強い理性がそれを止めている感じもする。その摩擦のようなものも含めて、芸術作品として昇華されていますね。

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郷古 今回のプログラムは、詩的で怪しさもあり、光はあるけど相手の正体がわからない、仮面をかぶっているかのような作品が集められています。メロドラマティックな夜ではなく、ちょっとした残酷さ、恐ろしさもあって、とても気に入っています。

北村 「夜クラ」に来てくださる方がどんな夜を求めていらっしゃるかわからないけど、我々が今回表現する「夜」はそちらの面が出ていると思います。夜の闇が隠してくれることもあるからこそ、我々は生きていける。それもまた事実だという。

横坂 長く一緒にやってきたピアノトリオとしての僕らの音とこれらの作品の世界がどうリンクするか、僕たちも開けてみないとわかりません。すごく楽しみです!

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後ピアノ専門誌の編集者を経て、2011年よりフリーライターとして活動。演奏家へのインタビュー、曲目解説の執筆、インドの西洋クラシック音楽事情の取材を行う。ショパン国際ピアノコンクール、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、エリザベート王妃国際コンクールなど世界のコンクールの長期取材に基づくウェブ上での情報配信、講座などを行う。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

「夜クラシックVol.42 郷古 廉・横坂 源・北村朋幹」

2026年11月27日(金)19:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

ヴァイオリン/郷古 廉
チェロ/横坂 源
ピアノ/北村朋幹

曲名[ ]内は演奏者

≪夜クラシック テーマ曲≫
ドビュッシー/月の光 [北村]

プロコフィエフ/5つのメロディ [郷古・北村]
武満 徹/オリオン [横坂・北村]
ラヴェル/ピアノ三重奏曲 第1楽章 [郷古・横坂・北村]
エネスク/夜の鐘 [北村]
シェーンベルク(シュトイアーマン編)/浄められた夜 [郷古・横坂・北村]

料金

【全席指定・税込】
S席 3,500円 
A席 2,500円

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

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