~2026年6月20日(土曜)「BUNKYO SIENA POPS the 8th ~想い出のアメリカン・サウンズ Ⅱ~」~
塩谷 哲(ピアノ)
スペシャルインタビュー
文京シビックホールとシエナ・ウインド・オーケストラでおおくりする渾身のオリジナルシリーズ『BUNKYO SIENA POPS』。
今回は昨年に続き、アメリカン・サウンズ第2弾をお届けします。
「SALT(ソルト)」の愛称で親しまれ、ジャズからクラシックまで幅広いジャンルで活躍するピアニストの塩谷 哲さんと、
文京シビックホール音楽プロデューサーで本シリーズの構成を手掛ける岩下恵一が、公演に向けての想いを語りました。

ピアノ
塩谷 哲
Satoru Shionoya
東京藝術大学作曲科出身。ソロアーティストとして現在まで13枚のオリジナルアルバムを発表する。自身のグループの他、小曽根真(p)との共演、佐藤竹善(vo)との"SALT & SUGAR"や上妻宏光(三味線)との"AGA-SHIO"の活動、リチャード・ストルツマン(cla)、スティーヴ・ガッド(dr)、村治佳織(g)、古澤巌(vln)ほか多数のコラボレート、オーケストラとの共演(2017年大阪交響楽団、2017&18年NHK交響楽団、23年東京フィルハーモニー交響楽団)を経て2025年6月28日初のオーケストラアルバム『Orchestra Works 1』をリリース。メディアではNHK Eテレ音楽パペットバラエティー番組『コレナンデ商会』(2016年~2022年3月)等の音楽を担当した。現在、国立音楽大学ジャズ専修准教授。
https://www.earthbeat-salt.com
取材・文:高坂はる香 写真:三浦興一
僕が果たすべき使命はそこにあるのかな、と改めて思う出来事でした。

ーBUNKYO SIENA POPS、Part.8は、前回に続き「アメリカン・ポップス」がテーマです。
岩下(文京シビックホール音楽プロデューサー) Part.7の構想を練っている際、取り上げたい作品が膨大な量になってしまって、その時から最低でも2回に分けないとご紹介することができないと思っていました。というわけで、前回はオールディーズやベンチャーズの作品を中心に取り上げましたが、Part.8では少し趣向を変えて、多くのポップカルチャーを創出した"ルート66" にインスパイアされ、北米大陸を西から東へと移動しながら、各都市にゆかりのあるホットな作品をピック・アップし、ニューヨークに赴くイメージのプログラムを組みました。そこでブルックリン出身のジョージ・ガーシュウィンをフィーチャー。ジャズピアニストの塩谷 哲さんに、スタンダードの小品をご披露いただきます!

ーニューヨーク、ガーシュウィンと聞いて何を思いますか。
塩谷 今回は演奏しませんが、2024年はガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」が初演から100周年という年だったので、何度も演奏する機会がありました。今から100年前といえば、2つの世界大戦の間の時代。アメリカは急速に経済発展を遂げ、タイムズスクエアには超高層ビルが次々と建ち、摩天楼が出来上がっていった、そんな頃です。ニューヨークは、生き生きとしたエネルギーに満ちた街だったのでしょう。
岩下 なるほど、そういうエネルギーを感じることでガーシュウィンも新しい楽曲作りのヒントを得たのかもしれませんね。フルオーケストラと言えば、まだクラシックが主流の時代。「ラプソディ・イン・ブルー」を初めて聴いたニューヨーク市民はどのように思ったのでしょうね。
塩谷 クラシックの聴衆は、驚いたでしょうね。僕が教えている国立(くにたち)音大では、毎年新入生オリエンテーションの一環として、全学生が出席して演奏会や講演を聴きレポートを提出するカリキュラムがあります。その中のある公演で僕がオーケストラと「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くことになったので、即興も入れながら弾いたところ、ものすごく反響があったんです!うちの学生はほとんどがクラシック専攻ですし、ピアノ科にはすごい先生たちがたくさんいるというのに、「すばらしかった!」「あの部分は即興!? すごい!」という声をたくさんいただきました。
おそらく同じようなことが100年前のニューヨークでも起きて、クラシックの聴衆が「ジャズってすばらしいじゃない!」と思ったのではないかなと考えました。
ガーシュウィンはジャズのすばらしさを伝えたくて、クラシックのスタイルであえてあのような作品を書いたはずです。彼のやりたかったことが100年後にこうして実現できたとしたら素敵だな、僕が果たすべき使命はそこにあるのかな、と改めて思う出来事でした。
彼らのサウンドの中でピアノを弾くことが、とても楽しみです。

―これまでの公演プログラム―
岩下 はい。今回塩谷さんにはピアノソロによる「魅惑のリズム」に加え、シエナ・ウインド・オーケストラとの共演で「ス・ワンダフル」や「アイ・ガット・リズム」などの小品をメドレーで演奏していただきます。シエナのスウィングは一人ひとり本当に最高なんです!
塩谷 そうなんですか、楽しみだなぁ!最高峰のウインド・オーケストラだということはもちろんずっと知っていますが、共演は今回が初めてなんです。きっとすごい世界が創られるのでしょうね。
ーウインド・オーケストラならではの魅力は、どんなところに感じますか?
塩谷 まずはやっぱり迫力ですよね。管楽器は単体の音の密度が高いですから、それが集まったウインド・オーケストラは、中低音が豊かで独特のサウンドが響きます。一流奏者が集うプロのウインド・オーケストラを聴くと本当に魅力的で、作曲家たちがこの編成のために作品を書きたいという衝動を感じた理由も、改めてわかります。彼らのサウンドの中でピアノを弾くことが、とても楽しみです。
生の音で聴くことのすばらしさを、ぜひ会場で味わってほしいですね。

ーピアニストは会場にあるピアノを使わなくてはいけないところが、他の多くの楽器と違うところですね。
塩谷 そうですね。実際、自分の楽器を使えるのが羨ましいと思っていた時期もあります。でも今は、その会場にあるすばらしいピアノをいっぱい弾ける楽しみのほうが大きいのです。
若い頃は、その日のピアノがしっくりこないと演奏もシュンとなってしまうことがあったのですが、最近はどんなピアノでも良いところを探して弾けるようになりました。すると、むしろそれが楽しくなってきたんです。
ーピアノの良いところを見つけてあげるコツはあるのでしょうか?
塩谷 まず一通り弾いて、「はじめまして。ああ、あなたはそういう方なんですね、僕はこういうピアニストです。」というやりとりを5分ほど行います。するとだいたい相手のことがわかります。マッサージ師みたいなものですね。「お客さん、ここ凝ってますね。......この筋肉のつき方、もしかしてアスリートでした?」みたいな(笑)。
ーマッサージ師のたとえは初めて聞きました!つまりピアノに対して、しばらく触れて、どういう人生を歩んで、どういう運動をしてきたから、こういう特質があるのだな、と理解してから向き合うと良い、ということですね。
塩谷 そうです。調律でどうにかなる部分ではない、ピアノそのものの個性というのがありますからね。それに逆らってガンガン弾いても、「イタイ、イタイ!」って言うだけで、全然鳴ってくれません(笑)。「それじゃあここをほぐしていきましょう。」と声をかけて、優しくやってあげないといけません。
ーガーシュウィンの作品の後はいよいよビック・バンドの特集になります。
岩下 最後はアメリカン・ポップスを語る上で欠かすことのできないビッグ・バンド・ジャズから"ベニー・グッドマン"や"グレン・ミラー"の定番曲を一気におおくりしたいと思います。先程も言ったとおり、シエナ・ウインド・オーケストラの極上のスウィングをたっぷりとお楽しみいただけるはずです!
塩谷 アメリカン・ポップスやビック・バンドは、子どもの頃から父親が聴いていたものを耳にしていた影響で、僕も大好きなジャンルです。文京シビックホールはとても響きが良いので、それを生の音で聴くことのすばらしさを、ぜひ会場で味わってほしいですね。
取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)
大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後ピアノ専門誌の編集者を経て、2011年よりフリーライターとして活動。演奏家へのインタビュー、曲目解説の執筆、インドの西洋クラシック音楽事情の取材を行う。ショパン国際ピアノコンクール、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、エリザベート王妃国際コンクールなど世界のコンクールの長期取材に基づくウェブ上での情報配信、講座などを行う。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」
BUNKYO SIENA POPS the 8th ~想い出のアメリカン・サウンズ Ⅱ~
2026年6月20日(土曜)15:00開演
文京シビックホール 大ホール
出演
指揮/栗田博文
ピアノ/塩谷 哲
吹奏楽/シエナ・ウインド・オーケストラ
ナビゲーター/朝岡 聡
編曲
三浦秀秋曲名
★は塩谷 哲 出演曲
荒野の七人
古き良きアメリカン・メドレー
(聖者の行進~峠の我が家~カントリー・ロード~テネシー・ワルツ~アメイジング・グレイス~いとしのクレメンタイン~ケンタッキーの我が家)
ルート6 6
ワイルドでいこう!
フロム・ウエスト・トゥ・イースト
(想い出のサンフランシスコ~ラスベガス万才~ルイジアナ・ママ~我が心のジョージア~シカゴ ニューヨーク・ニューヨーク)
ザ・ワンダフル・ ガーシュウィン ★
(ス・ワンダフル~誰かが私を見つめてる~スワニー~私の彼氏~アイ・ガット・リズム)
魅惑のリズム ★
A列車で行こう
茶色の小瓶
ムーンライト・セレナーデ
イン・ザ・ムード
シング・シング・シング
料金<税込>
全席指定
S席:6,000円 A席:5,000円 B席: 4,000円
【グループ割引】
同席種2枚以上同時購入でS・A席各500円引き。
※学生割引あり。詳細は公演ページをご覧ください。
お問い合わせ
シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。ただし、5/17(日曜)は休業。)
