選りすぐりの名曲を、四季を通じて堪能できる人気のサタデー・アフタヌーン・コンサート!
響きの森クラシック・シリーズ 2026-2027シーズン
全4回ラインアップ紹介
東京フィルハーモニー交響楽団による人気シリーズ公演「響きの森クラシック・シリーズ」。
2026-2027シーズンも選りすぐりのラインアップが出揃いました。
シリーズ4公演の聴きどころを、音楽ライターがご紹介いたします!
文:柴田克彦
日本トップ級の実力を誇る東京フィルハーモニー交響楽団が、著名指揮者やソリストと共に本格派の名曲を年4回届ける「響きの森クラシック・シリーズ」。2002年から続く当シリーズは、大半の公演が満席となる人気を集めている。
ここで2026-2027シーズンのポイントをご紹介しよう。まず全体の特徴は、俊英世代の生きのいい指揮者や話題の若手ソリストが多く名を連ねている点。演目では、ドヴォルザークやチャイコフスキー、ラフマニノフなど、日本人が愛するスラヴ・ロシア系の作品が中心を占めている点にある。つまり清新で生気に富んだ民族的な音楽を1年通して満喫できるのだ。
Vol.88
2026年7月18日(土)15:00開演
出演:原田慶太楼(指揮)
中川優芽花(ピアノ)
曲目:
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番
活躍目覚しい国際派指揮者・原田慶太楼と、藤田真央や河村尚子同様にクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝した中川優芽花が共演する、注目度抜群のコンサート。
1985年に生まれ、高校時代からアメリカで学んだ原田は、2020年同国のサヴァンナ・フィルの音楽&芸術監督、21年東響の正指揮者、24年愛知室内オーケストラの首席客演指揮者兼アーティスティック・パートナーに就任。25年7月からアメリカのデイトン・フィルの音楽・芸術監督を務めている。また米国各地の楽団や、東京フィル、N響、読響ほか多くの国内著名楽団に客演。23年には日本人初となる米国ショルティ財団のコンダクター賞を得るなど、受賞歴も数多い。
2001年ドイツのデュッセルドルフに生まれた中川は、当地やロンドン、ワイマールで学び、21年クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール、19年シューマン国際コンクール等で優勝。ロンドンのウィグモア・ホールやウィーンのコンツェルトハウスで演奏するなど欧州で活躍し、日本でもリサイタルを行うほか、東京フィル、読響、都響といった主要楽団と共演を重ねている。
原田も中川も日本人離れした旺盛な表現意欲が魅力。原田はあらゆる音楽を活性化させるエネルギー、中川は深い打鍵で奏でる雄弁な音楽が持ち味だけに、生彩に富んだ演奏を体験できること間違いなしだ。
演目は、前半がムソルグスキー(ラヴェル編)の組曲「展覧会の絵」。ここでは、"管弦楽の魔術師"によるカラフルなサウンドに加えて、東京フィルの各奏者の妙技も楽しみとなる。後半はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。ロシアン・ロマンティシズムと華麗なピアニズムが満載された傑作で、しかも屈指の難曲ゆえに、中川の技量と表現力を明確に感知できる。
Vol.89
2026年9月26日(土)15:00開演
出演:川瀬賢太郎(指揮)
天野 薫(ピアノ)
竹澤恭子(ヴァイオリン)
曲目:
モーツァルト/ピアノ協奏曲第9番
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番
ドヴォルザーク/交響曲第8番
若手世代の先頭を走る指揮者・川瀬賢太郎が溌剌とした音楽を創造し、25年仙台国際音楽コンクールにおける11歳での第3位受賞で話題を集めた俊才・天野 薫(ピアノ)と、世界的な実力者・竹澤恭子(ヴァイオリン)がソリストを務める興味津々のコンサート。
1984年生まれの川瀬は、2006年の東京国際音楽コンクール<指揮>で1位なしの2位(最高位)に入賞し、名古屋フィルの指揮者や神奈川フィルの常任指揮者として聴衆を魅了。現在は、23年から務める名古屋フィルの音楽監督と、札響の正指揮者、アンサンブル金沢のパーマネント・コンダクターを兼務している。
天野は2013年に生まれ、23年5月に9歳でデビュー・リサイタルを開催後、演奏活動を開始。前述の仙台をはじめ数々のコンクールで受賞している。
竹澤は長く世界の第一線に立つ名手。これまでに、ボストン響、シカゴ響、ロンドン響、バイエルン放響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管や、メータ、デュトワ、シャイー、ブロムシュテット、小澤征爾といった著名指揮者と共演し、室内楽やリサイタルを含め幅広く活躍している。
今回のポイントは、天野が弾くモーツァルトのピアノ奏曲第9番と、竹澤が弾くブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番が続き、10代前半の瑞々しい快奏と、デビュー35年を超えたベテランの至芸を合わせて味わえる点にある。モーツァルトの10番台の協奏曲でとりわけ賞賛された仙台での天野は、優等生的ではない"生きて躍動している"演奏で聴衆を魅了。今回もモーツァルト若き日の名作が演目だけに期待は大きい。また竹澤はドイツ・ロマン派屈指の名曲の豊潤な魅力を存分に伝えてくれること請け合い。むろん川瀬も、哀愁漂うドヴォルザークの交響曲第8番をはじめ、各曲を新鮮に響かせるに違いない。
Vol.90
2027年1月16日(土)15:00開演
出演:小林研一郎(指揮)
服部百音(ヴァイオリン)
曲目:
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
ドヴォルザーク/交響曲第 9 番「新世界より」
ご存じ"炎のコバケン"小林研一郎の指揮でチャイコフスキーとドヴォルザークの大名曲を満喫する極め付きのコンサート。若手屈指の辣腕・服部百音のヴァイオリンも必聴だ。
小林は、内外の名立たるオーケストラと共演を重ね、数多くのポジションを歴任。現在は、日本フィル桂冠名誉指揮者、ハンガリー国立フィル・名古屋フィル・群響桂冠指揮者、読響特別客演指揮者、九響名誉客演指揮者等を務める指揮界の重鎮である。
1999年生まれの服部百音は、2009年ポーランドでのリピンスキ・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで史上最年少第1位を獲得したほか、数々のコンクールで受賞。若くして内外で演奏活動を始め、N響、読響、東京フィル、東響ほか多数の著名楽団や指揮者と共演を重ねている。
今回は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が並ぶ究極の名曲プロ。まずこの2曲を、80歳を超えてますます深みを増しているコバケンの指揮で堪能できるのが大きな魅力だ、また驚異的名手・服部のヴァイオリンが、協奏曲名人でもあるコバケンのタクトを得ていかに輝くか?にも熱視線が注がれる。
Vol.91
2027年3月6日(土)15:00開演
出演:ケンショウ・ワタナベ(指揮)
鳥羽咲音(チェロ)
曲目:
プロコフィエフ/チェロと管弦楽のための交響的協奏曲(シンフォニア・コンチェルタンテ)
プロコフィエフ/「ロメオとジュリエット」組曲より(ケンショウ・ワタナベセレクション)
アメリカで活躍してきた指揮者ケンショウ・ワタナベと、ウィーン生まれの若き敏腕チェリスト・鳥羽咲音。ワールド・ワイドな感性を持った二人が顔を揃える、スケールの大きなコンサートだ。
1987年横浜生まれのケンショウ・ワタナベは、5歳で渡米。2016〜19年にフィラデルフィア管のアシスタント・コンダクターを務め、17年にはネゼ=セガンの代役として同楽団の定期演奏会にデビューを果たした。以後も同楽団やヒューストン響、デトロイト響、ロンドン・フィル等と共演。18年にはセイジ・オザワ松本フェスティバルでサイトウ・キネン・オーケストラを指揮して日本デビューを飾っている。
2005年音楽家の両親のもとに生まれた鳥羽は、数多くのコンクールで入賞&優勝。19年3月に初のソロ・リサイタルを開催して以来、沼尻竜典、広上淳一、山田和樹らの指揮のもと、読響、日本フィル、東京フィル、ウィーン室内管等と共演し、様々な場でリサイタルを行うなど、幅広く活躍している。
ケンショウ・ワタナベは、24年に年末の「第九」を任され、25年3月の当シリーズでも急遽バッティストーニの代役を務めるなど、東京フィルの信頼厚い名指揮者。自らセレクトしたプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」組曲を軸とする本プログラムでは、ダイナミックな持ち味がフルに発揮される。さらに同曲は東京フィルが25年秋のヨーロッパ・ツアーで中心に据えた演目。ゆえに完成度の高い名演が期待される。鳥羽は豊麗な音色で豪快かつ細やかな演奏を聴かせる凄腕の持ち主。ここは巨匠ロストロポーヴィチのために書かれた難技巧の大作=プロコフィエフの「交響的協奏曲」に挑む点で特に注目度が高い。またプロコフィエフの作品が当シリーズに登場する機会は少ないので、今回はその意味でも新鮮な公演となる。
極めてフレッシュな上に円熟の至芸も味わえる魅惑のラインナップ。ぜひともお得なセット券を入手し、年間通して楽しみたい。
取材・文:柴田克彦(しばたかつひこ)
音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。
「ぶらあぼ」等の雑誌、公演プログラム、WEB、宣伝媒体、CDブックレットへの取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や一般の講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)、「1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集」(音楽之友社)。文京シビックホールにおける「響きの森クラシック・シリーズ」の曲目解説も長年担当している。
