オススメ公演の聴きどころ指南
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

~ばっちり予習~

オススメ公演の聴きどころ指南

パーヴォ・ヤルヴィ率いる名門ドイツ・カンマーフィルが、満を持してシビックホールに初登場!
ソリストに迎えるのは、グラミー賞3度受賞のヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン。
音楽ライター・柴田克彦氏が本公演の聴きどころを徹底解説。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮 
ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団 
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

2024年12月10日(火)19:00開演 文京シビックホール 大ホール

文:柴田克彦

 20253月、文京シビックホールは開館25周年を迎える。そこで同ホールでは、多様なジャンルの一流アーティストが豪華なプログラムを披露する25周年記念シリーズが開催される。そのオープニングを飾るのが、パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団。世界中から熱い注目を集める名指揮者と、自身が芸術監督を務める世界屈指の精鋭集団が、シビックホール初登場を果たす。ソリストに迎えるのは、グラミー賞3度受賞の世界的ヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン。この実力者たちが、音楽の都ウィーンゆかりの大家の名曲を聴かせる、誰もが見逃せないコンサートだ。

Paavo+Jarvi+kaupo+Kikkas+2019b  (c)Kaupo Kikkas.jpg

パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)       Ⓒ Kaupo Kikkas

 パーヴォ・ヤルヴィは、1962年エストニアの首都タリン生まれ。タリン音楽院を経てアメリカに渡り、カーティス音楽院で研鑽を積みながら、レナード・バーンスタインに学んだ。そして1994年から97年までマルメ響の首席指揮者、2001年から11年までシンシナティ響の音楽監督、2006年から13年までhr 響(フランクフルト放送響)の首席指揮者、2010年から16年までパリ管の音楽監督を歴任。2019年からチューリッヒ・トーンハレ管の音楽監督を務めている。

 また、故郷のエストニア国立響の芸術顧問も務め、2011年には当地でパルヌ音楽祭を創設。同音楽祭では、同じく彼が創設したエストニア・フェスティバル管が目玉となっている。

 このほか、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ニューヨーク・フィル、シカゴ響といった著名オーケストラに客演。現在、世界で最も多忙な指揮者の一人となっている。

 日本でも、東響、N 響、大阪フィル等と共演。20159月〜228月にはNHK 交響楽団の首席指揮者(現在は名誉指揮者)を務め、その存在は我が国でさらに知られるようになった。

 ドイツ・カンマーフィルとは、2004年の芸術監督就任以来、長年にわたって密接な関係を構築。アジアやヨーロッパ・ツアーも行い、ウィーン楽友協会のレジデント・オーケストラも務めている。

 ドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェン、シューマン、ブラームスの交響曲全集等々、録音も盛んに行い、グラミー賞をはじめ多くの栄誉に輝いている。

 彼が生み出す音楽は、活力と生気に満ちている。普段隠れがちなフレーズにも命を吹き込むそのアプローチは、作品に新たな輝きを与え、聴く者にエキサイティングな感動と充実感をもたらしてくれる。


 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団は、ドイツ・ブレーメンに本拠を置く、世界屈指の室内オーケストラ。1980年に有志によって設立され、87年プロ楽団として正式に発足した。トーマス・ヘンゲルブロックやダニエル・ハーディング等が芸術・音楽監督を歴任。2004P.ヤルヴィが芸術監督に就任すると、ユニークなパフォーマンスで世界中の聴衆を魅了し、短期間で国際的オーケストラとしての評価を獲得した。

The_Deutsche_Kammerphilharmonie_Bremen-Paavo_Järvi_c_Julia_Baier.jpg

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団  ⒸJulia Baier

 P.ヤルヴィとのコラボレーションの中で特に注目すべき活動は6年間にわたるベートーヴェン・プロジェクト。彼らの解釈は各方面から高評価を獲得し、RCA(ソニー)で録音された交響曲全集は世界中の批評家から絶賛されている。次いでは、シューマン、ブラームスの交響曲に取り組み、やはり各地で大成功。その後は、シューベルト、モーツァルト、ハイドン等の演奏に力を注いでいる。また、2009年にはリリースしたCD3枚がエコー・クラシック賞を受賞。2010年にはドイツ・レコード批評家賞の特別賞が贈られた。

 同楽団は、飛び切りの名手揃いだけに技術的水準がすこぶる高く、人数を絞った編成による精緻で一体感のある演奏は、巨大オーケストラでは味わえない魅力に溢れている。そして何よりの特徴は、自主運営オーケストラゆえの意欲に満ちた音楽作り。時に議論を重ねて生み出される表現力旺盛な音楽は、皆を惹きつけて離さない。特にP.ヤルヴィとのコンビでは、彼の生気みなぎるリードと相まって、エネルギッシュな音楽を創造し、唯一無二の感銘を与えてくれる。

73de3109_HilaryHahn_202230102_ChrisLee_1101fn2 (c)Chris Lee.jpg

ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)      ⒸChris Lee

 ヒラリー・ハーンは、世界のトップに位置するヴァイオリニストの一人。1979年アメリカ・ヴァージニア州のレキシントンに生まれた彼女は、スズキ・メソードでヴァイオリンを始め、10歳でカーティス音楽院に入学。大家イザイ最後の弟子であるヤッシャ・ブロツキーに師事した。16歳で音楽院の卒業要件を満たし、すでにフィラデルフィア管、クリーヴランド管、ニューヨーク・フィル等と共演していたが、ヴァイオリンをさらに学ぶため、そして外国語や文学等の科目を受講するため卒業を数年間遅らせ、19歳で学士号を取得した。以後、世界の一流オーケストラとの共演やリサイタルを定期的に行い、シカゴ響、ニューヨーク・フィルのアーティスト・イン・レジデンスやジュリアード音楽院の客員アーティストも務めている。また、16歳からレコーディング活動を開始。デッカ、ドイツ・グラモフォン、ソニーから出たアルバムすべてがビルボード・チャートのトップ10に初登場し、3枚がグラミー賞を受賞している。

 ハーンは、現代最高ともいえる完璧な技巧と豊潤な音色を持ち、高精度かつ明快で表情豊かな音楽を聴かせる。しかもキャリアを重ねて演奏に深みを加えた現在は、最も聴くべきヴァイオリニストの一人となっている。

 

 今回のプログラムには、P. ヤルヴィ& ドイツ・カンマーフィルがこのところ集中的に取り組んでいるウィーンの古典的作品が並んでいる。最初のシューベルトのイタリア風序曲は、当時ウィーンを席巻したロッシーニの影響を反映した溌剌たる作品。生気に富んだ当コンビに相応しい音楽が、一気に往時のウィーンの世界へ引き込んでくれる。

 次のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、晴れやかで気品に満ちた、同ジャンルを代表する名作。" 歌う" 楽器としてのヴァイオリンの魅力が、シンフォニックなオーケストラも一体となった、壮大な規模で追求される。伸びやかに歌う場面が多いこの曲は、音が美しく伸びるハーンの持ち味にピッタリ。しかも彼女は、2006年日本でP.ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルがベートーヴェン交響曲全曲演奏会を行った際に同曲を共演し、超絶的な名演を残している。今回は、それから20年近い時を経たハーンの進化と、長年共演を続けているP.ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィルとの阿吽の呼吸が相まった、類い稀な熟演が展開されるに違いない。

 かわってシューベルトの「未完成」交響曲は、言わずと知れたポピュラー名曲。全2楽章の作品ながら、シューベルトらしい歌とロマンティックな響きに溢れた音楽は、大交響曲以上の充足感を与えてくれる。加えて、シューベルトは現在当コンビがプロジェクトを継続している作曲家だけに、新たな発見に満ちた、完成度の高い演奏が期待される。

 最後を飾るモーツァルトの「パリ」交響曲は、この天才がパリの聴衆の好みに合わせて書いた明朗・快活な作品。モーツァルトの交響曲の中でも最大規模の編成による華麗なサウンドと、パリの優雅さも秘めた躍動感みなぎる音楽を、存分に堪能できる。すなわち当コンビの個性にジャスト・フィットした作品だけに、生命力と推進力抜群の演奏が聴く者の心を弾ませること請け合いだ。

 

 20年のパートナーシップを誇る現代屈指の名指揮者と名楽団のコンビに、最高度の技量を持った"ヴァイオリンの女王"が加わって、多彩なウィーン音楽を生き生きと奏でる本公演。ぜひとも生で体験したい。

柴田克彦(しばた かつひこ)

音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。
「ぶらあぼ」等の雑誌、公演プログラム、WEB、宣伝媒体、CDブックレットへの取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や一般の講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)、「1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集」(音楽之友社)。文京シビックホールにおける「響きの森クラシック・シリーズ」の曲目解説も長年担当している。

パーヴォ・ヤルヴィ 指揮 
ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

2024年12月10日(火)19:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

指揮/パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン/ヒラリー・ハーン
管弦楽/ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

曲名

シューベルト/イタリア風序曲 D591
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D759「未完成」
モーツァルト/交響曲 第31番 ニ長調 K.297 「パリ」

料金

【全席指定・税込】
SS席 19,000円【予定枚数終了】
S席 17,000円
A席 15,000円
B席 13,000円
C席 11,000円【完売】
D席 9,000円【完売】

学生割引あり
S席8,500円、A席7,500円、B席6,500円にて販売。
※学生割引はシビックチケットのみ(窓口・電話予約)での取扱いとなります。
※学生割引は、JR各社の学生割引定期券を利用できる学生の方に限ります。

※ご入場時に必ず学生証を提示ください。
 提示が無い場合は、当日受付にて通常価格との差額をお支払いただきます。

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

2024_The-Deutsche-Kammerphilharmonie-Bremen_360_512.jpg