人気アーティストの演奏による極上の音楽で安らぎのひとときを・・・
夜クラシック 2023-2024シーズン
全4回ラインアップ紹介
3 年ぶりのシリーズ再開を彩るのは、各回に登場するアーティストたち。
新進気鋭の若手アーティストの共演から、名手が集うスペシャル編成のアンサンブルまで、多彩なプログラムが揃いました。
年4回、同じお席でお聴きいただけるシーズンセット券をお買い求めいただき、
昼間の喧騒から一息おいて、一流アーティストの演奏で安らぎのひとときをお過ごしください。
※「夜クラシック」シリーズは、本シーズンより開演時間を30分早め、19:00開演に変更いたします。
文:高坂 はる香
優れたアーティストの演奏とトークで、日常の中にすてきな夜の時間をもたらしてくれる「夜クラシック」。クラシック音楽ファンはもちろん、普段クラシックになじみのない方でもリラックスして楽しめると人気のシリーズだ。プログラム内で演奏されるシリーズテーマ曲、ドビュッシーの「月の光」を、さまざまな奏者や楽器のアレンジで聴くことができるのも、楽しみのひとつ。
2014年にスタートしたこのシリーズが、文京シビックホールの改修工事による休止を経て、3年ぶりに帰ってくる。
来シーズンも、注目の若手やますます円熟味の増すベテラン、ピアノデュオや弦楽器アンサンブルなど、多彩なアーティストたちが出演。いずれも実力は折り紙付きだ。プログラムも、それぞれの出演者たちが、夜のひとときを彩るにふさわしい作品をセレクトしてくれている。それぞれの演奏会の聴きどころをご紹介しよう。
Vol.29
2023年7月28日(金)19:00開演
仲道郁代
萩原麻美
出演:仲道郁代(ピアノ) 萩原麻未(ピアノ)
曲目:モーツァルト/2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448
ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より ダッタン人の踊り
ラヴェル/ラ・ヴァルス
ビゼー(アンダーソン編)/カルメン幻想曲
ほか
記念すべきシリーズのVol.1にソロリサイタルで出演して以来、さまざまなスタイルのアンサンブルで多彩な音楽の世界を見せてくれている、ピアニストの仲道郁代。 7度目の登場となる今回は、ピアニストの萩原麻未と、2台ピアノによる演奏を披露する。
萩原は広島に生まれ、パリ国立音楽院で研鑽を積み、2010年ジュネーヴ国際コンクールピアノ部門に日本人として初めて優勝して注目を集めたピアニスト。おおらかさと意志の強さを兼ね備えた演奏が魅力だ。シリーズのVol.24で、室内楽アンサンブルのメンバーと登場している。
今回二人が演奏するのは、親しみやすい旋律を持つ名曲たち。モーツァルトの「2台ピアノのためのソナタ」は、「のだめカンタービレ」の中でも登場するなど、人気の高い作品。その他、ボロディン「ダッタン人の踊り」、ラヴェル「ラ・ヴァルス」、 ビゼー(アンダーソン編)「カルメン幻想曲」と、美しく力強い舞踏を彷彿とさせる音楽が集められている。
シリーズを通じて音楽のさまざまな魅力を届ける仲道が、今回は萩原とともに、ピアノ2台、20本の指で実現しうるリズムとメロディの魅力を教えてくれる。
Vol.30
2023年10月13日(金)19:00開演
實川 風
周防亮介
出演:實川 風(ピアノ) 周防亮介(ヴァイオリン)
曲目:フォーレ/夜想曲 第4番 変ホ長調 Op.36
フォーレ/舟歌 第6番 変ホ長調 Op.70
ラヴェル/ツィガーヌ
ショーソン/詩曲 Op.25
フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調
若き気鋭によるデュオが、夜クラシック初登場。實川 風は、2015年にパリのロン・ティボー・クレスパン国際コンクールで1位なしの3位という経歴を持つ。ソリストとして活躍すると同時に、室内楽の経験も豊富に積んでいるピアニストだ。
一方の周防亮介は、1995年京都生まれ。東京音楽大学で学び、2016年ポーランドのヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールに入賞して注目された。
今回二人が演奏するのは、デュオ版によるテーマ曲「月の光」にはじまるオール・フランス・プログラム。その内容は、フォーレ中期の美しいピアノ・ソロ作品、ヴァイオリンの超絶技巧が存分に楽しめるラヴェル「ツィガーヌ」や、ショーソンがロシアの作家、ツルゲーネフの恋愛物語に着想を得て描き始めたとされる「詩曲」と、多岐にわたる。
また、フランス系ヴァイオリン・ソナタの最高傑作といわれる、セザール・フランクのソナタでは、実力派として評価の高い二人の音楽の構成力、確かな表現力を見せてくれるだろう。
Vol.31
2024年1月26日(金)19:00開演
(左から 山根一仁、田原綾子、毛利文香、上野通明)
出演:エール弦楽四重奏団
山根一仁(ヴァイオリン) 毛利文香(ヴァイオリン)
田原綾子(ヴィオラ) 上野通明(チェロ)
曲目:ドビュッシー/弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
シューベルト/弦楽四重奏曲 ニ短調 D.810 「死と乙女」
ほか
エール弦楽四重奏団は、山根一仁(ヴァイオリン)、毛利文香(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、上野通明(チェロ)によるカルテット。いずれも華やかなコンクール暦を持ち、ソリストとしても人気の若手奏者でありながら、高校生の頃からときどき集まってはカルテットとして共演を重ねてきたメンバーだ。
2021年2月に開催予定だった公演は新型コロナウイルスの影響で延期されてしまったが、今回は3年近くの時を経て、同じプログラムによる公演がようやく実現する。演目は、ドビュッシーの弦楽四重奏曲Op.10と、シューベルトの弦楽四重奏曲 「死と乙女」。なかでもシューベルトのほうは、彼らが高校生のときから取り組んでいるレパートリーだという。留学経験や人生におけるさまざまな変化など、約10年の時を経て各々深まった音楽を持ち寄り奏でる「死と乙女」。旧知の仲だからこその音楽、そして曲間のトークも楽しみだ。
Vol.32
2024年3月15日(金)19:00開演
出演:前橋汀子&弦楽アンサンブル
曲目:マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 間奏曲
サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ
マスネ/タイスの瞑想曲
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 Op.72-2
ドヴォルザーク/わが母の教え給いし歌
ヴィヴァルディ/四季
日本クラシック音楽界のレジェンドと呼ばれ、2022年に演奏活動60周年を迎えたヴァイオリニストの前橋汀子。戦後間もない頃にソ連のサンクトペテルブルク音楽院に留学。その後は国際的な活動を続け、日本のクラシック音楽界の扉を世界に開いたパイオニアだ。
そんな彼女が、夜クラシックに再登場。今回は、高い実力を持つ奏者ばかりを集めた弦楽アンサンブルとともに、管弦楽作品の名曲を届ける。
前半に集めているのは、ヴァイオリンのマスターピース。前橋の深みのある音が、おなじみのメロディをのびやかに歌い上げる。
そして後半は、ヴィヴァルディの代表作である「四季」。前橋のリードにより、息のあったアンサンブルが春夏秋冬を鮮やかに描き出す演奏に、大いに期待したい。
前回の夜クラシック登場時のインタビューで、「若い頃から学ぶことが大好き。それは今も変わらない」と語っていた前橋。歳を重ねてますますスケールアップする音楽に出会えそうだ。
名曲プログラムから、オール・フランス・プログラム、室内楽のマスターピースによるプログラムと、3年ぶりのシーズンも、クラシック音楽の魅力を多様な角度から楽しめるラインアップ。4公演を通して聴けば、さまざまな音楽の扉が開かれるだろう。シリーズ初登場のアンサンブル、ここでしか聴くことのできない企画も多いので、どうぞお聴き逃しなく!
取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)
音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」