オススメ公演の聴きどころ指南 レ・ヴァン・フランセ

~ばっちり予習~

オススメ公演の聴きどころ指南

フランスのエスプリを受け継ぐ木管アンサンブルとして結成されたレ・ヴァン・フランセ。
クラシック界の"スーパーシックス"とも謳われる彼らの来日公演を前に、
その魅力を音楽ライターがご紹介!
これを読めば、最高峰のアンサンブルがより一層楽しめます。

レ・ヴァン・フランセ

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          レ・ヴァン・フランセ 
          Ⓒwildundleise. de Georg Thum 2014

   一度体験した人は何度も聴きたくなる魅力を持った、未体験の人は絶対に一度聴くべきアンサンブル。それが「レ・ヴァン・フランセ」だ。 
 彼らは、管楽器王国フランスのエスプリを受け継ぐ木管アンサンブル。1990年代後半、クラリネット奏者ポール・メイエが、国際的に活躍する友人たちに声をかけて結成された。最初にメンバーが参加したプーランクの室内楽全集のCDは1999年発売と同時に絶賛を博し、日本ではレコード・アカデミー大賞を受賞。以降、数多くのCDをリリースし、世界中で高く評価されている。NHKテレビで放映され、あまりの完璧さで衝撃を与えた2002年以来、固定されたベスト・メンバーで定期的に来日。毎回大人気を集めている。

 まずはそのメンバーが凄い。ベルリン・フィルの首席奏者にしてフルート界のトップ・スター、エマニュエル・パユ、バイエルン放送響の首席奏者を経て、ソロや室内楽で名を馳せるオーボエのフランソワ・ルルー、世界有数のクラリネット奏者にして指揮者のポール・メイエ、ベルリン・ドイツ響の首席奏者を経て、やはりソロや室内楽で光を放つホルン界屈指の名手ラドヴァン・ヴラトコヴィチ、パリ・オペラ座管首席奏者でバソン(フランス式バスーン)の第一人者ジルベール・オダンと、各楽器の頂点に立つ名手たちが木管五重奏を形成し、フランスを代表する名ピアニスト、エリック・ル・サージュが幅をもたらす。
この顔ぶれはまさしくドリーム・チームと言うに相応しい。
 

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 ©Nicolas Tavernier

 "フランスの風"を意味する名称のごとく、メンバーはヴラトコヴィチを除く全員がフランス人(パユはスイス生まれ)でパリ音楽院の出身。ゆえに同一方向の奏法や音色を身に付けている。サウンドは明朗かつ軽妙で音のブレンドがきわめて芳醇。質朴でまろやかなバソンの存在も独自のテイストに大きく寄与している。また、通常の木管五重奏と異なる特徴が、ピアノを加えたアンサンブルである点。木管楽器のグループにピアニストがレギュラー参加している例は珍しく、これによってより多彩なレパートリーとサウンドが生み出される。  

 個々の奏者の名人芸もむろん圧倒的だが、アンサンブルはさらに凄い。ピタリと揃った節回し、精妙なバランス、豊潤なハーモニー、流れるように受け渡されるフレージングには、もはや唖然とするほかない。そこに、フランス流の洗練味とウイットが加わり、愉悦感は満点。熟達した名奏者たちが音で会話し、融合することによって生まれる音楽には、誰しも引き込まれること間違いなしだ。

 バラエティに富んだプログラムの中で、全員が参加してほぼ毎回演奏されるトレードマーク的な作品が、プーランクの六重奏曲。フランス"六人組"を代表する作曲家の看板室内楽曲の1つで、おもちゃ箱をぶちまけたかのように多彩な楽想が飛び交いながらも、シリアスさと気品と粋なエスプリを湛えた快作だ。これをレ・ヴァン・フランセはいつも鮮烈で瑞々しく、いま音楽が生まれ出るように聴かせる。彼らの凄みが集約されたこの曲を聴くだけで、公演に足を運ぶ価値があると言っても過言ではない。

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    文京シビックホール過去公演のチラシ

 文京シビックホールとの縁も深く、2012年の初登場以降、今回が通算4回目の公演。メンバーにとって馴染みの会場である点も強みと言える。ましてや2020年7月の公演がコロナの影響で中止になったので、今回はいつにも増して待望のステージとなる。 

 彼らは、管楽器愛好家の楽しみに留まりがちだった木管アンサンブルを、一般の音楽ファンすべてが満喫できるジャンルに変えた稀有の存在。その唯一無二の妙技を、新装成った文京シビックホールで、ぜひ味わいたい。

柴田克彦(しばた かつひこ)

音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。
「ぶらあぼ」等の雑誌、公演プログラム、WEB、宣伝媒体、CDブックレットへの取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や一般の講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)、「1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集」(音楽之友社)。文京シビックホールにおける「響きの森クラシック・シリーズ」の曲目解説も長年担当している。

レ・ヴァン・フランセ

2023年3月7日(火)19:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

レ・ヴァン・フランセ
  エマニュエル・パユ(フルート)
  フランソワ・ルルー(オーボエ)
  ポール・メイエ(クラリネット)
  ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(ホルン)
  ジルベール・オダン(バソン)
  エリック・ル・サージュ(ピアノ)

曲目

ミヨー/フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのためのソナタ Op.47
ベートーヴェン/ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 Op.16
タンギー/六重奏曲(委嘱新作・日本初演)
リゲティ/6つのバガテル
プーランク/六重奏曲

料金

【全席指定・税込】S席 5,000円 A席 4,000円 B席 3,000円

学生割引あり
S席3,000円 A席2,500円にて販売。

※学生割引はシビックチケットのみ(窓口・電話予約)での取扱いとなります。
※ご入場時に必ず学生証を提示ください。
 提示が無い場合は、当日受付にて通常価格との差額をお支払いただきます。

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

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