スペシャルインタビュー 夜クラシックVol.40




~2026年2月5日(木)「夜クラシックVol.40 清水和音・松田理奈」~

清水和音(ピアノ)・松田理奈(ヴァイオリン
スペシャルインタビュー

実力派アーティストが数々の名曲を
気さくなトークを交えながらお届けする室内楽シリーズ"夜クラシック"。
Vol.40に出演のお二人に、共演の思い出やプログラムの聴きどころなどをうかがいました。

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©Yuji Hori

ピアノ

清水和音

Kazune Shimizu

完璧なまでの高い技巧と美しい弱音、豊かな音楽性を兼ね備えたピアニスト。
ジュネーヴ音楽院にて、ルイ・ヒルトブラン氏に師事。1981年、弱冠20歳で、パリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門優勝、あわせてリサイタル賞を受賞した。これまでに、国内外の数々の著名オーケストラ・指揮者と共演。室内楽の分野でも活躍し、共演者から厚い信頼を得ている。これまでにソニーミュージックやオクタヴィア・レコードなどから多数のCDをリリースし、各誌で絶賛されている。
2011年には、デビュー30周年を記念して、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番~第4番とパガニーニの主題による狂詩曲の全5曲を一度に演奏するという快挙を成し遂げた。2014年から2018年の5年間では年2回のリサイタル・シリーズ「清水和音 ピアノ主義」を開催。幅広いレパートリーで聴衆を魅了。20164月からは、年6回の室内楽シリーズ「芸劇ブランチコンサート」を開始するなど精力的な活動を続けている。デビュー40周年となった2021年秋には「清水和音 ピアノの祭典」と題し、ソロから室内楽まで4時間を超えるプログラムで大きな存在感を示した。桐朋学園大学・大学院 教授。




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©Akira Muto

ヴァイオリン

松田理奈

Lina Matsuda

桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースにて研鑽を積み、2006年ドイツ・ニュルンベルク音楽大学に編入。2010年、同大学院を首席にて修了。1999年に初ソロリサイタルを開催した後、2001年第10回日本モーツァルト音楽コンクールヴァイオリン部門第1位、同コンクール史最年少優勝。2002年にはトッパンホールにて「16才のイザイ弾き」というテーマでソロリサイタル開催。2004年、第73回日本音楽コンクール第1位、2007年にはサラサーテ国際コンクールにてディプロマ入賞。2013年新日鉄住金音楽賞受賞。
これまでに国内の主要オーケストラに加え、ハンガリー国立フィル、スーク室内オーケストラ、ヤナーチェク・フィルハーモニー室内管、ベトナム響など数々のオーケストラや著名指揮者と共演。 2006年ビクターより『ドルチェ・リナ』をリリース。その後『カルメン』、清水和音とライブ収録した『ラヴェル・ライブ』、『イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲集』をリリース。2018年にはブラームスとフランクのソナタを収録した5枚目のアルバムをリリースした。
オフィシャルホームページ https://linamatsuda.com

取材・文:高坂はる香  写真:三浦興一

上手い下手とは別の"素材の良さ"が感じられました

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―お二人の出会いはいつでしょうか?当時の思い出は?

清水 秋吉台の音楽祭です。理奈さんがまだ高校1年生の頃だよね。

松田 はい、師事していた堀 正文先生と和音さんが一緒にやっていらした音楽祭に初めて参加したときです。当時、和音さんの全集のアルバムを聴いていましたから、"巨匠がいる!でもずいぶんラフな格好だな!"と思っていました(笑)。 先生方が、楽器の種類に関係なくフラットに接してくださってとても楽しかったです。 朝から晩までレッスンとリハーサルという環境に身を置いて、貴重な経験ができました。

清水 レッスン後はみんな自然と集まって飲み会が始まるから、結局は1週間以上にわたって毎日、"朝から朝まで"状態でしたね。優秀な子がたくさん集まる中、理奈さんは一番若いんだけれど、とても魅力的な世界を持っている印象でした。能力や才能って音を出した瞬間にわかるものですが、彼女は特別でした。歌手の声みたいなもので、上手い下手とは別の"素材の良さ"が感じられました。

―今では多くのステージをご一緒されていますが、初めて共演されたきっかけは?

松田 音楽祭中、流れで一緒に演奏する機会はありましたが、正式にステージで共演したのは、音楽賞の褒賞コンサートという特別な機会です。主催者に、共演したいピアニストがいたらどなたでもと言われて、和音さんにお願いしたい!とリクエストしたのが最初だと思います。

松田さんから見て、清水さんの音楽にはどんな印象がありますか?

松田 大海原みたいですね!どんな曲で私が何をしても、みごとに弾いてくださいます。

―「夜クラシック」初登場ということで、お気に入りの夜の過ごし方を教えてください。

松田 真面目な答えになりますが、子どもが寝たあとしか音楽に集中できる時間がないので、夜はようやく音楽に浸れる時間です。練習するときもあれば、少しお酒を飲みながら音楽を聴くときもあります。

清水 真面目だね!僕は暗いところのほうが落ち着くし、夜は秘密のにおいがするから大好きです。お酒を飲まないから、そういう楽しみ方はないんだけど。

音楽は世の中のあらゆるもののなかで一番すばらしいと思っているからじゃないかな

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―今回のプログラムで楽しみにしている作品、魅力を感じるところをお聞かせください。

松田 私は今回のプログラムだと、クライスラーの「前奏曲とアレグロ」を楽しみにしています。大ホールで和音さんとぜひ弾きたいと思ってリクエストしました。

清水 クライスラーの作品って、ヴァイオリンの鳴りがすごく良くなりますよね。作品が楽器を鳴らしている感じがする。そういうふうに曲を書くことが上手だったんでしょう。

松田 確かにそうですね。ヴァイオリンの名器をたくさん持っていたから、楽器が鳴るツボを熟知していたんだと思います。クライスラーを弾いていると、楽器のコンディションが良くなるんですよ。ヴァイオリンが喜ぶ音列みたいなものがあるのかもしれません。

清水 ピアノにとってのリストみたいなものかな。弾いているとピアノがよく鳴ってくる作品がたくさんあります。

松田 ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」については、これまで和音さんとは2番を演奏することが多かったので、3番も弾いてみたいなと選びました。

清水 ブラームスのアンサンブル作品はすばらしいですよね。僕はブラームスが大好きだけれど、初期作品のピアノ・ソナタは絶対に弾くつもりがない。楽譜を見ると、頭の中がものすごかったことはわかるけれど、誇大妄想的に理想をつめこんであるから、実際に弾くと無理が多くて自分で弾くつもりはないんです。でも、ヴァイオリン・ソナタはどれも後期の作品だから好きです。

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―夏の休暇に湖畔で集中して作品を書いていた時代ですね。

松田 そういう場所で作曲に集中できる環境があったなんて、良い時代ですよね。私も湖畔でのんびり森林浴をして過ごすことに憧れますが、ヴァイオリンを弾かないとどうしても気になりそうで、なかなかできません。

清水 僕は湖畔にいたら間違いなく1日で飽きちゃうな(笑)。街の方が好きだから!自然の中でのんびりという発想がないんですよね。

―でも、清水さんの音楽は自然に興味がないとは思えないというか、スケールが大きくてまるで大自然のようです。不思議なものですね。

清水 せっかちでゆったりすることができないのもあるけれど、僕にとって、音楽は世の中のあらゆるもののなかで一番すばらしいと思っているからじゃないかな。他のものはつまらないんですよ。森林浴をするより、ベートーヴェンを聴いている方が楽しい。それより楽しいことがあるとは、到底思えないかな。

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後、ピアノ専門誌の編集者を経て、2011年よりフリーライターとして活動。国内外でピアニスト等の取材を行うほか、世界のピアノコンクールの現地レポートも配信している。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.40 清水和音・松田理奈

2026年2月5日(木)19:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

ピアノ/清水和音
ヴァイオリン/松田理奈

曲目

≪夜クラシック テーマ曲≫
ドビュッシー/月の光

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第14番「月光」[ピアノ・ソロ]
ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番 ★
クライスラー/前奏曲とアレグロ ★
シューマン/3つのロマンス Op.94 ★
チャイコフスキー/なつかしい土地の思い出 ★

【★マーク】
試聴できます(2026年2月まで/試聴音源の演奏家・楽器編成は演奏会のものと異なる場合がございます。)

料金

【全席指定・税込】
S席 3,000円
A席 2,000円

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

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