~ 2024年11月22日(金) 「夜クラシックVol.34 東京フィルハーモニー交響楽団 コントラバスセクション」 ~
東京フィルハーモニー交響楽団 コントラバスセクション
黒木岩寿/片岡夢児/小栗亮太/中村元優
スペシャルインタビュー
「夜クラシック」シリーズ10周年を記念し、文京シビックホールが事業提携を結ぶ
東京フィルハーモニー交響楽団のコントラバスセクションフルメンバー(10名)が登場!
今回は、メンバーの中から黒木岩寿さん、片岡夢児さん(以上、主席)、小栗亮太さん、中村元優さんの4名にお話しをうかがいました。
東京フィルハーモニー交響楽団 コントラバスセクション
©井村重人
コントラバス
黒木岩寿
Iwahisa Kuroki
東京芸術大学卒業、同大学院修士課程修了。安宅賞、福島賞を受賞。東京芸術大学管弦楽研究部講師、神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席コントラバス奏者を経て'09年東京フィルハーモニー交響楽団に移籍、首席コントラバス奏者に就任。'16~'21までムジカーサのプロデューサー、'19~長野市芸術館のプロデューサーに就任。桐朋学園芸術短期大学、洗足音楽大学、昭和音楽大学、大分県立芸術短期大学講師。室内楽ではM・アルゲリッチ、Y・バシュメット、モディリアーニカルテット、J・リン等共演。自らの企画&台本の文化人類学講座は来年で第6講を重ねる。
コントラバス
片岡夢児
Yumeji Kataoka
東京藝術大学卒業、及び同大学院修士課程修了。大学院修了時にコントラバスとしては初の大学院アカンサス賞を受賞。大学院在籍時に新日本フィルハーモニー交響楽団に入団。その後2018年より東京フィルハーモニー交響楽団首席奏者に就任。第3回秋吉台音楽コンクールコントラバス部門第2位、第4回秋吉台音楽コンクール弦楽器部門第2位、第19回コンセール・マロニエ21弦楽器部門第2位、第1回K弦楽器コンクール第1位、その他受賞多数。コントラバスを永島義男氏に師事。
©井村重人
コントラバス
小栗亮太
Ryota Oguri
東京音楽大学卒業。2008、2009、2010年ミュージック・マスターズ・コース・ジャパンに参加。トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズ、オーケストラMAP'S、アンサンブル・フォルテの公演に参加。2013年、兵庫芸術文化センター管弦楽団アソシエイト・プレイヤー。これまでコントラバスを小室昌広、永島義男、山本修、黒木岩寿の各氏に師事。現在東京フィルハーモニー交響楽団コントラバス奏者。
©SmileStyleStudio
コントラバス
中村元優
Motomasa Nakamura
三重県桑名市出身。13歳よりコントラバスを始め、東京藝術大学 音楽研究科修士課程を修了し、現在東京フィルハーモニー交響楽団コントラバス奏者を務める。第5回秋吉台音楽コンクール コントラバス部門第1位。第1回伊勢志摩国際弦楽コンクール 第3位 等、受賞歴多数。小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIV、アフィニス夏の音楽祭2023に参加し、研鑽を積む。これまでに故・田中伸幸、永島義男、池松宏、吉田秀、西山真二各氏に師事。
取材・文:高坂はる香 インタビュー写真:三浦興一
楽しみでもあるけれど、怖さもありますね。
--夜クラシック10周年を記念して、東京フィルハーモニー交響楽団コントラバスセクションの10人の奏者が集まる特別な企画です。コントラバス十重奏は滅多に聴ける機会がありませんね。
黒木:楽しみでもあるけれど、怖さもありますね。自分たちが発信して開催してみようとは思わないレアな企画です。だから、文京シビックホールさんからご提案いただいたことは良いきっかけになりました。
--コントラバス十重奏というのは、どんな音がするのでしょうか?
黒木:僕も経験したことがないので実は未知数なんです!(笑)。
片岡:とにかく迫力はすごいでしょう。コントラバスの音域は低音が中心で、最も低音の部分は、小学生などには聞き取りにくいヘルツ数なんですよ。
中村:"バスアン"は東京藝術大学時代、4人ずつ4パートに配置された16人でやったとき以来なので、かなり久しぶりです。
黒木:"バスアン"って、コントラバス・アンサンブルね。僕たちにしかわからないよ(笑)。
小栗:そもそも普段のコンサートで、東京フィルのコントラバス奏者10人全員が集まることは中々ありませんから、まずそれが楽しみです。同じオーケストラの仲間だからこそ、気さくに意見を交換しながら音楽作りができそうなのも心強いです。
いろいろな編成でコントラバスの可能性を感じていただこうと思います。
--プログラムは、「夜クラシック」テーマ曲の「月の光」から始まります。
黒木:これは私がソロで演奏します。コントラバス1本で「月の光」を弾くのは初めての試みなので、まだ想像がつきません。原曲はピアノのためにかかれているので、 音がいくつもあるのがネックです。
片岡:僕たちも当日まで聴けませんから楽しみです。黒木さんが一体どれだけ大変なことになっているのか(笑)。
黒木:光が見えない新月みたいな演奏になるかもしれませんが、頑張ります(笑)。そこから10人による「美しく青きドナウ」、若い二人のソリストと四重奏によるボッテジーニの「パッショーネ・アモローザ」、四重奏によるバッハの「シャコンヌ」と、いろいろな編成でコントラバスの可能性を感じていただこうと思います。
小栗:「パッショーネ・アモローザ」では僕が1番、中村くんが2番のソロを担当します。大変な曲なので、本番を楽しんで弾けるようにしっかり準備したいと思います。目立ち慣れていないから、ソロになるととたんに緊張しがちなのですが(笑)。
中村:オーケストラの中ではみんなで同じパートを弾くけれど、この日は一人ずつ違う音を弾くから、かなり気分が違いますね。
黒木:そしてメゾ・ソプラノの中島郁子さんをお迎えするオペラのアリアでは、普段耳にするものとは違った響きが出てくるはず。東京フィルはオペラも得意とするオーケストラですから、我々らしさも出ると思います。
そしてフィナーレは十重奏によるホルストの『惑星』より「木星」です。
片岡:「木星」については、僕がコロナ禍にコントラバス奏者4人で一人2パートを演奏する8人のリモート多重録音をしたので、今回はその譜面を十重奏に直して演奏します。オーケストラ版を彷彿とさせるアレンジで、8本でも充分壮大だったところに2本加わるので、相当スケールの大きな音楽になると思います。
今回は初めて実際に集まってアンサンブルをすることになるので、一体どうなるだろうという不安もありますが、みんなで音にするのが楽しみです。
--横一列に並んで演奏するのですか?その場合どのくらいの幅になるのでしょう。
黒木:相当になりますよね。だからリハーサル場所の確保も大変です。大きな楽器を運ばなくてはならないコントラバス奏者は全員車で来るから、駐車場の確保も必要です。
中村:横一列だと、端と端でどれだけお互いの音が聴こえるかも不安ですね(笑)。
片岡:見た目のインパクトからすごそう。どういう並びにするとアンサンブルがやりやすいか、いろいろ試して決めていこうと思います。
黒木:コントラバス奏者は、学生時代はたくさんソロを練習するのでメロディのパートはできるし、オーケストラに入れば低音域を担うのでこちらも得意なんだけれど、実は中音域のパートを弾く機会が少ないんです。今回このアンサンブルを経験したら、こんなに大変なことをやっていたのかと知ってセカンドヴァイオリンやヴィオラの人に優しくなると思うので、オーケストラの今後にも良い影響があると思います(笑)。
--コントラバス奏者ならではの性格や特徴はありますか?
片岡:今までの会話からもわかるかもしれませんが、大雑把な傾向がありますね。細かいことは気にしません。みんな黒木さんを見習っているので(笑)。
黒木:オーケストラで自分のパートが暇なときは、ニコニコしながらみんなを見ている(聴いている)よね(笑)。ただ、だからこそどこまでちゃんと聴けるか、耳のアンテナの良さは大切です。あと、楽器が大きく体がある程度成長しないと弾けない楽器なので、始める年齢が遅く、そのために他の弦楽器とは明らかにキャラクターが違うと感じることが多いですね。
音楽は二度と同じ演奏はできません。常に昨日の自分よりいいものができたらと思っています。
--どのような音楽を目指していらっしゃいますか?
黒木:僕が理想にしているのは、右腕が習字の筆のイメージであること。筆というのは柔らかいけれど、タイミングやスピードでしなりをうまく使えば力強い字も書けます。コントラバスの演奏もかなり近いイメージです。
音楽は二度と同じ演奏はできません。常に昨日の自分よりいいものができたらと思っています。
片岡:今回はアンサンブルで、コントラバスならではの魅力が存分に発揮できるといいなと思います。そして"やっぱりコントラバスには勝てない!"という低音や厚い響きと、ヴァイオリンやチェロなど他の楽器の人からも憧れてもらえるような、コントラバスのステイタスが一段上がる表現を目指したいですね。
中村:普段オーケストラでは全員で一つの音を作りますが、今回は個々が違う音色や個性を出すことになるので、それぞれがうまくマリアージュする演奏を目指したいです。僕も知らない皆さんの姿が見られるのではないかと、楽しみにしています。
小栗:コントラバスはソロを演奏することが少ないですし、人の心を動かす演奏を目指すことが難しい楽器だとも思いますが、今回は自分がソロを担う曲もあるので、聴きに来てよかったと感じていただけるような演奏をお届けできるように頑張りたいと思います。
黒木:"みんなで渡れば怖くない"じゃないけれど、10人いるからきっとうまくいく(笑)!響きの分厚さ、音域の広さを駆使した、コントラバスにしかできない音楽を存分に味わっていただける演奏会にしたいと思います。
取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)
音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」
夜クラシックVol.34 東京フィルハーモニー交響楽団コントラバスセクション
2024年11月22日(金)19:00開演
文京シビックホール 大ホール
出演
東京フィルハーモニー交響楽団コントラバスセクション
[片岡夢児・黒木岩寿・遠藤柊一郎・小笠原茅乃・岡本義輝・小栗亮太・
熊谷麻弥・菅原政彦・田邊朋美・中村元優]
中島郁子(メゾ・ソプラノ/特別出演)
曲目
ドビュッシー/月の光
J.シュトラウスⅡ/美しく青きドナウ ★
ボッテジーニ/パッショーネ・アモローザ [ソリスト/小栗亮太、中村元優] ★
J.S.バッハ/「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番」より"シャコンヌ"
ヘンデル/歌劇「アルチーナ」より"緑の牧場よ"
フォーレ/「レクイエム」より"ピエ・イエズ" ★
ビゼー/歌劇「カルメン」より"ハバネラ(恋は野の鳥)"
ホルスト/組曲「惑星」より "木星" ★
※本公演では、一部曲目において音響装置を使用する場合がございます。
★曲名をクリックで試聴できます(2024年12月まで/試聴音源の演奏家・楽器編成は演奏会のものと異なる場合がございます。)
料金
全席指定
S席 3,000円
A席 2,000円
お問い合わせ
シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)