スペシャルインタビュー 夜クラシックVol.33

~ 2024年8月23日(金) 「夜クラシックVol.33 横坂 源・上野通明・水野優也・柴田花音」 

横坂 源(チェロ)/上野通明(チェロ)/水野優也(チェロ)
スペシャルインタビュー

実力派アーティストが数々の名曲を
気さくなトークを交えながらお届けする室内楽シリーズ"夜クラシック"。
「夜クラシックVol.33」に出演の3名に本公演への意気込みをうかがいました。

横坂源.jpg       
      ©Takashi Okamoto

チェロ

横坂 源

Gen Yokosaka

シュツットガルト国立音楽大学、並びにフライブルク国立音楽大学で学ぶ。全日本ビバホール・チェロコンクール第1位(史上最年少)、全ドイツ学生音楽コンクール室内楽部門第1位、ミュンヘン国際音楽コンクール第2位。これまでに出光音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、ホテルオークラ音楽賞を受賞。
近年ではS.スヴィリドフ:チェロ協奏曲『つばき』の新作委嘱・世界初演をWürth Philharmonikerと、日本初演を東京交響楽団と行い、日本フィルハーモニー交響楽団とM.ルグラン:チェロ協奏曲の日本初演を果たした。20215月には、東京都交響楽団とP.デュサパン:チェロ協奏曲《アウトスケイプ》の日本初演を果たした。使用楽器は、日本音楽財団よりストラディヴァリウス1696年製「ロード・アイレスフォード」を貸与されている。現在最も幅広い演奏活動を展開するチェリストの一人である。

上野通明.jpg
       ©Seiji Okumiya

チェロ

上野通明

Michiaki Ueno

2021年ジュネーヴ国際音楽コンクール・チェロ部門日本人初の優勝。その他13歳で若い音楽家のためのチャイコフスキー国際音楽コンクール日本人初の優勝、ヨハネス・ブラームス国際コンクール優勝など、国際舞台で次々と活躍し話題となる。
これまでにワルシャワ・フィル、ロシア国立響、スイス・ロマンド管、KBS響、都響、読売日響、新日本フィル等国内外の主要オーケストラと共演。出光音楽賞、ホテルオークラ音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。P.ウィスペルウェイに招かれ19歳で渡独。現在エリザベート王妃音楽院にてゲーリー・ホフマンにも師事。使用楽器は1758年製P.A.Testore(宗次コレクション)、弓はF.Tourte(住野泰士コレクション)をそれぞれ貸与されている。

水野優也.jpg

           ©Yuji Ueno

チェロ

水野優也

Yuya Mizuno

89 回日本音楽コンクール第 1 位及び岩谷賞(聴衆賞)、黒栁賞、徳永賞、全部門を通じて最も印象的な演奏に対し贈られる増沢賞を受賞。第 13 回東京音楽コンクール第 1 位及び聴衆賞、第 31 回青山音楽賞新人賞など他多数受賞。ソリストとして東響、東京フィル、日本フィル、読響、大阪響、京響などと共演。国内外でのリサイタル、室内楽公演、国際音楽祭への参加などにも意欲的に取り組む。ジャパン・ナショナル・オーケストラコアメンバー。特待生として桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コース修了。ハンガリー・リスト音楽院にてミクローシュ・ペレーニに師事。現在、ザルツブルク・モーツァルテウム大学にてクレメンス・ハーゲンに師事。


取材・文:高坂はる香  写真:三浦興一

これを誰とやってみたいかな...と想像して思い浮かんだメンバーにお声がけしました。

2024.02.29-001.jpg

ー今回は今回はどのように集まったメンバーでしょうか。

横坂:「月の光」から始まるプログラムを考えたとき、これを誰とやってみたいかな...と想像して思い浮かんだメンバーにお声がけしました。

上野:源くんとは、毛利伯郎先生門下の繋がりで、僕が小さい頃、レッスンの時間が前後だったときにチラッとお会いしたことがありました。その頃の源くんは、孤高の存在というイメージで...。

横坂:孤高(笑)?

上野:でもその後親しくさせていただくようになってからは、本当に温かい方だということがわかりました(笑)。一緒にいる人をわくわくさせてくれる方なんです。

横坂:僕が上野くんをよく覚えているのは、東京交響楽団&サントリーホール主催の「こども定期演奏会」にそれぞれソリストとして参加したときのこと。ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番1楽章を弾いていて、うまい!と思って。それに音楽がすごくナチュラルに入ってきたことを覚えてます。
 ヨーロッパに留学して、日本で学んでいた頃にはわからなかった音楽の軽さやテンポの流れをどう掴むかが一つのテーマになっていたのですが、彼はその壁を簡単にこえてストンと入ってくる音楽をしていると、衝撃を受けたんですよね。

水野:僕は、上野くんが桐朋学園の2つ上の先輩なので、その頃に知り合っています。横坂さんは昔から憧れていた先輩で、福井県武生市で開催される武生国際音楽祭で初めてお会いしました。

横坂:きれいな川が近くにあったからみんなで河原に石投げをしにいったよね。そのあと腕がプルプルして大変だったけど(笑)。
 あと今日いらしていない柴田花音さんは、僕も今度が初共演です。コンクールのショスタコーヴィチの協奏曲の動画を見て、素敵な演奏をされる方だと思ってお願いしました。

水野:これまでアンサンブルだと自分が最年少になることが多かったのですが、今回は柴田さんがさらに年下です。より自覚をもって取り組まないと!

顔ぶれが変わるとどうなる?と思いながらやっていくのが楽しいです。

2024.02.29-025.jpg

ーチェロ・アンサンブルの楽しさはどこに感じますか?

上野:性格が関係するのかもしれませんが、一般的にチェリストが集まると、わいわいガヤガヤしながらあたたかい雰囲気のアンサンブルができることが多いですよね。

横坂:確かにみんな仲がいいよね。桐朋学園には、高校1年生から大学4年生まで集まって何十人かでチェロ・アンサンブルをする伝統があるのですが、上下関係の隔たりなく、誰がどんな提案をしてもいい雰囲気がありました。

水野:僕も高校1年生のときから毎年それに参加して、チェロ・アンサンブルの心地よさに親しみました。編曲版でも、チェロだけで弾くとまるでそれがオリジナルのように聴こえるんですよね。音域や奏法の面で可能性が大きい楽器ならではだと思います。

横坂:同じチェロ同士、誰かが別のアプローチをしているのを見て触発されるおもしろさもありますよね。
 最近は、チェロ・アンサンブルが増えている感覚がありますが、それはおそらくチェリストの層が厚くなってきているからでしょう。気の合うメンバーで演奏して、顔ぶれが変わるとどうなる?と思いながらやっていくのが楽しいです。

2024.02.29-024.jpg

 

ーみなさんソリストとして活躍されているので、どのパートを受け持つかは曲ごとに割り振ることになるのでしょうか? 

横坂:そうですね、この曲でこの人がここを弾いたらどうなるかをイメージしながら、それぞれいろいろなパートを担当して、曲ごとに表情が変わる形を取りたいので...多分、パートの取り合いにはならないと思います(笑)。高音域の1チェロは難易度が高いことが多いですが、間を縫う人の運びも重要ですし、支柱となるバスが大事なのはもちろんのことです。
 一緒に弾いていると、それぞれの特徴、いわゆる"ファイトスタイル"が見えてくるので、各人の良いところを組みあわせて良いものを目指したいです。

水野:そう言われてみると、僕は1チェロを弾くとき、激しい曲より静かでゆっくりした曲を割り振られることが多い気がする。

横坂:水野くんは、中低音域で深い音がするところが魅力ですよね。留学先で師事している先生を見ると、その音とリンクするものを感じます。

上野:水野くんは聴かせてもらうたびに音がすごく良くなっていくし、高貴で品のある音がして好きです。...僕自身は、このパートが割り振られやすいみたいな傾向はあまりないかなぁ。

横坂:上野くんは、これは弾きにくくて大変だなというところをいつもサラっと弾いてくれる(笑)。頼もしい存在です。

ゆったりスタートして、だんだんギアを上げていく流れです。

2024.02.29-041.jpg

ープログラムはどのように選ばれたのですか?

横坂:冒頭で演奏する「月の光」を軸に考えていきました。ドビュッシーならではの、棘や毒と美しさが表裏一体で存在する感じが、全体に伝染していくイメージです。彼は印象派というより、象徴派的でエキセントリックなものを持つ人なので、退廃的なところや反骨精神が感じられるピアソラやジャズを繋げるのも自然かなと。そして最後はガーシュウィン「ポートレート」でお祭り的に盛り上がります。ゆったりスタートして、だんだんギアを上げていく流れです。

水野:僕はほとんど初めて弾く曲ばかり。ジョンゲンを弾くのは高校2年生以来なので、今度は新たな魅力に気づけたらいいなと思います。

上野:リサイタルでもそうですが、源くんのプログラミングって一見繋がりがなさそうに思えて、聴き終わるとそのラインがわかって、すごい演奏会だったと思うことが多いんですよね。今回も事前に音源を聴いていって、こうなるんだ!と思いました。

2024.02.29-046_トリミング.jpg

ーこのメンバーの共演で楽しみにしていることをお聞かせください。

上野:最初にお話をいただいたときから、僕が日本で好きなチェロのトップ奏者と一緒にできるんだと楽しみにしていました。チェロ・アンサンブルって、普段のコンサート以上にただ楽しんで演奏できるところがあるんですよね。同じ楽器を弾く者同士、どうしてそんなことができるのか教えてもらったり、技術をこっそり盗んだりしながら(笑)、リハーサルから楽しみたいです。

水野:僕も2年前に話をいただいたときからずっと楽しみにしていて、みなさんの音から勉強したいと思っています。いつも以上に、仲間と一緒に弾いている、一人じゃないという感覚があるのがチェロ同士のアンサンブルの魅力です。4人それぞれの音色の違いを楽しんでいただきたいです。

横坂:僕も、こうして素敵なメンバーと一緒にステージに上がることができるので、準備段階からとてもわくわくしています。
 日本って協調性が求められる傾向にあると思いますが、今回はあまりそこに縛られず、個々の良さを出しながら、担当するパートの役割を全うしていくだけですごくいいものが完成しそうです。そういうスタンスのほうがプログラムとうまく噛み合って、即興的でスイングする楽しさを感じていただけるのではないでしょうか。
 珍しい曲も入っていますが、構えず、"お腹を空かせて"聴きにいらしててください!

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.33 横坂 源・上野通明・水野優也・柴田花音

2024年8月23日(金)19:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

チェロ/横坂 源、上野通明、水野優也、柴田花音

※〈出演者変更のお知らせ〉
本公演に出演を予定しておりました岡本侑也は、都合により出演できなくなりました。
代わって、柴田花音が出演いたします。

お客様におかれましては、何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。

曲目

ドビュッシー(小林幸太郎 編)/月の光
ジョンゲン/2つの小品
フィッツェンハーゲン/コンサート・ワルツ Op.31
デューク・エリントン(トーマス=ミフネ 編)/Sophisticated Lady、Birmingham Breakdown
J.S.バッハ(ヴァルガ 編)/「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」 より 第5曲 "シャコンヌ"
ピアソラ(小林幸太郎 編)/天使の死、アディオス・ノニーノ、悪魔のロマンス
ガーシュウィン(アーミテージ 編)/ポートレート

料金

全席指定
S席 3,000円
A席 2,000円

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

2023_yoru_classic_vol33_360_511.jpg

聴く機会の少ない、おもしろい響きが生まれるはず