スペシャルインタビュー 文京シビックホールリニューアル×小曽根 真デビュー40周年記念 小曽根 真スペシャルライブ

2023年6月16日(金) 「文京シビックホールリニューアル×小曽根 真デビュー40周年記念 小曽根 真スペシャルライブ」~

小曽根 真(ピアノ・ハモンドオルガン)
山岸竜之介(エレキギター)/きたいくにと(ドラムス)/中林俊也(サックス)
スペシャルインタビュー


ジャズ界の第一線を走り続ける小曽根 真がデビュー40周年を記念して、若手気鋭アーティスト達とリニューアルした文京シビックホールにて共演。
出演者が語る音楽への思いや、本公演についてなどインタビューで伺いました。

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ピアノ/ハモンドオルガン

小曽根 真

Makoto Ozone

バークリー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業。同年米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム「OZONE」で全世界デビュー。2003年グラミー賞ノミネート。チック・コリア、ゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス、パキート・デリベラなど世界的なプレイヤーとの共演や、自身が率いるトリオやビッグ・バンドの活動など、ジャズの最前線で活躍。また、クラシックにも本格的に取り組み、NYフィル、サンフランシスコ響、シカゴ交響楽団等とも共演。2019年、小曽根真featuring No Name Horses の15周年記念アルバム「Until We Vanish」を、また、2022-23年には初のベスト版「THE BEST」をリリースし、全国ツアーを催行。2021年シーズンは還暦の節目に「OZONE60」公演を全国47都道府県で開催し成功を収めた。
平成30年度紫綬褒章受章。
オフィシャル・サイト http://makotoozone.com/

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エレキギター

山岸竜之介

Ryunosuke Yamagishi

幼稚園年長の頃「さんまのスーパーからくりTV」にて、世界的ギタリスト"Char"とギターセッションをし一躍注目の存在となる。20195月には20歳を迎え、1stアルバムをリリース。6月には世界的ジャズピアニスト小曽根真と初共演しその後、ALレコーディングに参加。その他、LIVERECサポートギター、ソングライター(ギタリスト、DTM)等でも活動。20215月日比谷音楽祭、ソロ名義で出演。

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ドラムス

きたいくにと

Kunito Kitai

1995奈良県生まれ。世界的ドラマー神保彰氏に才能を見出され大学在学中にプロデビュー。増尾好秋MAGATAMA・鈴木勲OMASOUNDのレギュラーメンバーを努め、小曽根真Trio・エリック・ミヤシロバンドなどへも参加。ジャズ界に身を置きながら、エンタメジャズバンド「Calmera」のメンバーとして、全国の大型ロックフェスに出演した。角松敏生や佐藤竹善などのバックバンドにも参加。

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サックス

中林俊也

Shunya Nakabayashi

1997年神奈川県生まれ。10歳の頃よりジャズサックスを始め、高校時より都内ライブハウスで演奏活動を始める。2016年、国立音楽大学Jazz専修に入学。ジャズサックスを池田篤氏、クラシックックスを坂東邦宣氏に師事。20193月には、自己のリーダートリオで名古屋、大阪、金沢、富山、東京のツアーを成功させる。20203月、国立音楽大学ジャズ専修を首席で卒業。矢田部賞受賞。


インタビュー・文:高坂はる香   インタビュー写真:三浦興一    プロフィール写真 : Leslie Kee 

なぜならそれは生きる力で、輝きがあるから。




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            小曽根 真


--今回の公演は、小曽根真さんデビュー40周年とホールのリニューアルオープンを記念し、さらに小曽根さんがパンデミック中に立ち上げた次世代アーティストにバトンをつなぐプロジェクト「From Ozone Till Dawn」の一環として行われるものです。プロジェクトを続けてこられて、手応えはいかがですか?


小曽根:
手応えは始める前からありました。ミュージシャンにとって技術は必要だけれど、一番大切なのはものを創るエネルギーです。かっこいい言い方をすると、"生きる力"というか。若い頃ってがむしゃらに頭を打つまで走って、ぶつかったらこっちに走る、みたいなところがありますよね。そのエネルギーは人を魅了します。なぜならそれは生きる力で、輝きがあるから。最初は彼らのための場所を作りたいと始めたことですが、1年半一緒に音楽を創ってきて、ああ、これは僕がやりたかったことなんだと思いました。若い人が今どういうことをやっているのかにもすごく興味がありますし。年齢が違っても対等ですから、必要であれば容赦なくどんどん要求します。そうしないと逆に失礼ですからね!

本当に頼もしいですよ。

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           山岸竜之介

--お三方はそんな要求を受けながら共演を重ねてきて、どうお感じですか?

山岸:僕が初めて小曽根さんと共演したのは2019年で、それまでジャズやプログレッシヴ・ロックに触れる機会がありませんでした。今はやったことのない音楽に挑戦する緊張がむしろ快楽になっています(笑)。どんなジャンルでも音楽がすごく好きだし、メンバーと気持ちが合致する瞬間、それがお客さんと共有できた瞬間は興奮します。そのエネルギーの交換が大好きで、中毒になっているのかもしれません。

小曽根:山岸君に初めてNo Name Horsesのツアーに入ってもらったとき、僕が飛行機の中で書いた「Carrots Or Bread?」を翌日までに準備しておいてと急遽お願いしたことがありました。リハに行ったらバシッと弾くから、ファンクやったことあったんじゃない!といったら、「何をいうてるんですか! 昨日、寝ないで勉強しましたから」って(笑)。でもそれって気力だけじゃなく実力もあるからできること。できない人にはできないですからね。

山岸:1日寝ないくらいでかっこいいステージができるなら、それに越したことはありませんからね。1年寝ないとなると無理ですけれど(笑)。

小曽根:本当に頼もしいですよ。中林君もきたい君も宿題を出せばすぐにやってくる。二人は国立(くにたち)音楽大学で教えていた生徒でもあります。

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             中林俊也  

--学生の頃からいろいろな"要求"があったのですか?

小曽根:中林君にはあまりなかったかな? 

中林:そうですね。フロントのセクションなので、小曽根さんがリズム・セクションに大変なリクエストをしているのを横で見ていました(笑)。僕はもともと楽器を持ち始めた時からジャズをやっていたので、大学でやってやるぞ!と息巻いていたのですが、初め、小曽根さんがリズム隊に言っていることの意味がわからなかったんです。でもそれを理解しようとし続けたことは、今すごく活きています。フロントにとって、リズム隊の気持ちをどれだけ考えられるかはとても重要です。逆に彼らがフロントのことをすごく考えてくれていると実感する瞬間も増えました。

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             きたいくにと

小曽根:僕は国立の優秀な学生には世界に出てほしいと思っていたので、日本のジャズ界の一部の大人が主張するアプローチに縛られないでほしいと伝えていました。
 例えばよくあるのが、ジャズドラムの音は小さくないといけないということ。でも電流でいう2ボルトのエネルギーのただ小さな音で叩く音は、小さなジャズクラブならいいけれど2千人のホールでは通用しません。まずは100ボルトで大きくきれいな音を鳴らすこと。それから、針の穴に糸を通すようなピアニシモを出せるよう、技術を磨いていかないといけないと伝えます。
 その意味で、ドラムのきたい君とはいろいろあったよね(笑)。

きたい:僕は初め、音楽をやることの意味や、ドラムを叩くことが人に影響を与えるかもしれないだなんて考えたこともありませんでした。そんなとき小曽根さんから教えられたのが、感性を鍛えることの大切さです。全ての表現に理由と感情があるということを、実際に叩いて目の前で見せてくれました。そのおもしろさを知ったら何をしても楽しくて、寝る間を惜しんで勉強しはじめましたね。

小曽根:その後、僕のバンドに入ってもらってライブをしたことがあったのですが、次のセメスターでちょっといろいろあった(笑)。おそらくきたい君としてはステップアップの手応えがあったんだろうけれど、これは僕の欲深いところで、君はもう次を目指すべきななのにどうしてそこで満足している?と思ってしまった。自分で気づくかと見ていたけれど、ぜんぜん気づかない。それでどんどん距離ができてしまって。

きたい:あまりに距離ができたことにがまんできなくなって、「僕の何がダメなんですか?」って聞きにいったら、「それがわかってないのがダメなんだ」って言われて。小曽根さんが教室から出ていったあと、悔しくてそこにあったゴミ箱を蹴飛ばしました(笑)。

小曽根:その話、卒業してから聞いたよね(笑)。でもきたい君は入ってきたときからずば抜けていたんです。技術のある人はたくさんいるけれど、彼には感性がありました。

やっぱり"自分"よりも音楽が好きなんじゃないですかね。

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--才能を感じる人はどこが違うのでしょうか。

小曽根:やっぱり"自分"よりも音楽が好きなんじゃないですかね。音楽より"自分"が好きな人は、できないことがあるとめげるんです。でもこのメンバーは、できないことがあれば悔しい!っていいながらニコニコして、次の日にはやります。

--若いお三方は、音楽を奏でることを通じてなにを目指していますか?

山岸:小さい頃からギターを弾いてきた中でずっと思っているのは、たくさんの人に音楽を届けたいということ。ジャンルに固執せず大きな音楽をやることで自分の可能性も広げたいし、好き、かっこいいと感じる気持ちに正直でい続けたいです。難しくても1日寝ずに頑張って自分が更新されていくことが、人生の終わりまで続いていくんじゃないかなと思います。

中林:楽器を吹いていると、昨日はこう思っていたのに、今日はやっぱりこっちだ!となることが多くて、でもその瞬間が実は一番楽しいんです。毎日自分のできないことに向き合って、できるようになると一人で家ではしゃいだりしています。それがなくなったらもう音楽から手を引くべき時だと思うので......そんな時が来ないよう、死ぬ直前まで挑戦し続けたいです。病院のベッドに寝ていても、楽器と、大好きな白いご飯だけは手放しません(笑)。

きたい:僕も音楽的な意味で欲深い人間ですが、そんなふうに欲に従って生きるというのは誰にでもできることではありません。それを許されているからには真剣に音楽と向き合い続けたい。音楽を通じ、自分がどういう人間なのかを知ることができて、とにかくおもしろいです。

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--小曽根さんもいくつになってもずっとワクワクしてエネルギーにあふれている印象ですが。


小曽根:そこにいるだけでうるさいって言われるからね、何もしゃべってないのに(笑)。

山岸:僕は小曽根さんがほんまに大好きで、かっこいいなと思っています。自分も小曽根さんの年齢になったとき、同じように音楽にワクワクしていたいですね。

中林:僕は昔から小曽根さんの音楽に憧れていましたから、まず共演している状況が信じられません。ステージでは一番の特等席で小曽根さんを聴かせてもらっているファンの状態です。でも小曽根さんは共演者として対等に扱ってくれるので、その意味で、いつか小曽根さんに僕のファンになってもらえるようにならないといけないと思っています。

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きたい:小曽根さんは宝箱みたいな方なので、どう転がしてもおもしろいものが山ほど出てくる。だからずっと触れていたいです。知らないことをいっぱい教えてくださいますけれど、逆に僕のほうが知っていることを見つけたらステージに持っていって、おもしろいね!と言い合いたい。それをお客さんと共有できることが幸せです。

小曽根:
僕はすでにみんなのファンですよ。一番楽しんでいるのもやんちゃしてるのも僕だから、それはステージを見たらすぐにわかると思います。でも最近はみんなも仕掛けてくるからね! 

--セットリストはまだ発表されていませんが、今回小曽根さんはハモンドオルガンも演奏予定だそうですね。

小曽根:ピアノを始める前にやっていた楽器です。原始的なつくりで音の立ち上がりがすごいので、怖がって弾くとすぐにバレますが、いるだけでうるさい人間にはすごく相性が良い(笑)。ホールで弾くとパイプオルガンのような豊かな響きがすると思います。
 僕はお客さんの感性を信じています。だから自分が楽しいと感じる仲間と、わくわくする音楽をするだけです。音楽というメディアを使って僕らのエネルギーを飛ばしますので、ぜひ会場で受け取っていただきたいですね。

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

文京シビックホールリニューアル×小曽根 真デビュー40周年記念
小曽根 真 スペシャルライブ

2023年6月16日(金)18:30開演

文京シビックホール 大ホール

出演

ピアノ・ハモンドオルガン/小曽根 真
エレキギター/山岸竜之介
トランペット/松井秀太郎
サックス/中林俊也
ベース/小川晋平
ドラムス/きたいくにと

料金

SS席:6,000円[完売] S席:5,000円 A席:4,000円 〈全席指定・税込み〉

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

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