スペシャルインタビュー 昼クラシック




~2022年10月21日(金)「昼クラシック」~

岡田 奏・鈴木隆太郎(ピアノ)
スペシャルインタビュー

人気のシリーズ公演''夜クラシック''に続いて''昼クラシック''が初登場!
平日のお昼前、2台ピアノによる、優雅で華やかなひとときをお届けします。
出演者のお二人に、パリ留学時代の思い出や本公演への意気込みをうかがいました!

岡田奏

©Kazashito Nakamura

ピアノ

岡田 奏

Kana Okada


15歳で渡仏し、パリ国立高等音楽院でF.ブラレイに師事。プーランク国際ピアノ・コンクールおよびピアノ・キャンパス国際コンクール第1位、エリザベート王妃国際音楽コンクールのファイナリスト。 ベルギー国立管やシモン・ボリバル響のほか日本全国のオーケストラと、Ⅿ.バーメルト、S.ヴァイグレ、Ⅿ.オールソップ、小林研一郎、尾高忠明、広上淳一、山田和樹等の指揮者と共演。 NHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」、NHK-FM「名曲アルバム」等に出演。デビュー・アルバムをトリトーン・レーベルよりリリース。

鈴木隆太郎

ピアノ

鈴木隆太郎

Ryutaro Suzuki

栄光学園高等学校を卒業後、渡仏。パリ国立高等音楽院でB.リグット、H.カルティエ=ブレッソン、M.ダルベルト、M.ベロフに、フィレンツェでE.ヴィルサラーゼに師事し、パリを拠点に演奏活動を行う。イル・ド・フランス国際ピアノ・コンクール第1位、エミール・ギレリス国際ピアノ・コンクール第2位、ヴァルティドネ国際音楽コンクール第2位等、受賞多数。東京フィル、神奈川フィル、コロンビア国立響、ルイジアナ・フィル、オデッサ国立管等と共演。フランス国営ラジオ等に出演。クラヴェスとオルトゥスから2枚のアルバムをリリース。

取材・文:高坂はる香  写真:K.Miura

いつか弾きたいと思っていた曲なのです。

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ーお二人はパリ留学時代から長らくの友人同士ですが、共演は初めてだそうですね。

岡田:はい、出会ったのは私がパリ国立高等音楽院に留学して3年目の時ですからもう13年来の友人です。

鈴木:奏ちゃんは若い頃から留学していて3年目でもまだ17歳という、学校でも注目されている存在でした。初めて会ったのは、僕が入学試験で学校に行って、練習室が空くのを待っている時でした。

岡田:パリの自分の部屋にピアノがなかったので、朝から晩まで学校にいました(笑)。練習室を1時間半借りるために何時間も待たなければならなくて、大変だったよね。

鈴木:そうだね、朝早く学校に行って練習室を取り、授業に出たり練習をしたりして、1日終わったら誰かの家で飲んだりしていました。とにかく毎日が楽しかったよね。

岡田:本当に、濃くて楽しい毎日だった。日常生活の中に、勉強になること、吸収できることが溢れていて、とても刺激的でした。パリは、歩いているだけでもインスピレーションが湧いてくる街です。


ー同じ街で学んだお二人で、モーツァルト、ラヴェル、ラフマニノフの2台ピアノ作品を演奏されます。


鈴木
:モーツァルト(2台のピアノのためのソナタ)は、お昼のコンサートを爽やかに始めるにはぴったりですし、多くの方に馴染みがあるだろうと選びました。ラヴェル(マ・メール・ロワ/2台ピアノ版)は、何かフランス音楽を入れたいと思ったとき、華やかでキラキラしていて良いだろうと自然と決まりましたね。そしてラフマニノフ(2台のピアノのための組曲)は、実は僕がパリ留学1年目の時、奏ちゃんが室内楽の試験のためにこの曲を練習していて、それを聴いて以来、いつか弾きたいと思っていた曲なのです。だから今回このお話をいただいて、即座にプログラムに入れました(笑)。僕はまだ一度も弾いたことがないので、これから大変ですけれど。

岡田:そういえば試験で弾いた!リハーサルにいたことは全然覚えていないけど(笑)。

留学で各国ごとのスタイルや適切な音を教わりました。

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─「ラフマニノフ/2台のピアノのための組曲 第2番」はパリの思い出とつながりのある選曲だったのですね。魅力はどこに感じますか?

鈴木:端的にいうと、とにかくかっこ良いんですよね。メロディもわかりやすいし、楽しんでいただけると思います。

岡田:そう、本当にかっこ良いし、聴けばすぐにラフマニノフだとわかる響きがします。私はその後も何回か弾いていますが、第一と第二ピアノに聴きどころと難しさが均等に配分されていて、各奏者の良いところがわかります。

ー作曲家ごとに求められる音がだいぶ異なりそうですね。

岡田:はい、フランス留学では、フランス音楽に限らず、各国ごとのスタイルや適切な音をかなりしっかり教わりました。結構、大きな視点で勉強してきたよね?

鈴木:そうですね、おかげで一つの演奏会にいろいろな作品があっても対応出来ます。特に今回は2台ピアノという室内楽の形で、二人で作曲家ごとのモードを切り替え演奏したいと思います。

─やはり同じ場所で勉強していると、わかり合いやすいですか?

岡田:それはありますね。同じ言語で学んだ仲間とは、日本で共演するときもイメージを伝えるとき、フランス語の単語で説明することがわりとあります。

鈴木:留学時代はよくそれぞれのソロによる弾き合い会をして、お互いに感想を言い合うこともありましたが、そのときも、日本語に訳しにくい言葉はフランス語で伝えていましたね。今回のリハーサルもそんな感じになりそうです。

─弾き合い会では意見を言い合うのですか?

岡田:すごく言います(笑)。良いことだけでなく悪いことも。フランス人は議論が好きですよね。

鈴木:そう、フランス人の特徴ですね。でもそれで仲が悪くなることはありません。終わったらみんなで飲みにいったりします。

奏ちゃんは、一言で表すなら、ファイヤーですね(笑)。

ーお互いの性格や音楽にどんな印象をお持ちですか?

鈴木:奏ちゃんは、一言で表すなら、ファイヤーですね(笑)。自発的というか、思ったことをパッと行動に移すタイプ。

岡田:隆ちゃんは、自分の考えを持っていて流されないタイプです。パリではスリが多いので、小綺麗な格好をしていると目をつけられやすいのですが、隆ちゃんはいつもジャケットときれいな靴というスタイルを崩さず、学校で見かけると先生に見えるくらいでした(笑)。でも親しくなるとギャップがあることもわかって、掘れば掘るほどいろいろなところが出てくる人です。

鈴木:確かに、パリで泥棒に狙われたことが2回ありました。1度は殴られて鼻の骨が折れて入院したのですが、それでもこの服装はやめませんでした(笑)。

─音楽性で、似ている、違うと感じることは?

岡田:かなり違うのではないかと(笑)。最後に演奏を聴いたのは5年前なので、隆ちゃんは絶対そこから変わっていると思いますけれど。今思い出しても、留学し始めた頃と卒業の頃の演奏に別人みたいな要素があって、びっくりしましたからね。

鈴木:それは奏ちゃんも同じでしょう。長くフランスで刺激を受けたら、変化せざるを得ません。様々な先生からいろいろな方針の指導を受け、自然とその全てが糧になったと感じます。今回はただ奏ちゃんの演奏を聴くだけでなく、一緒に音楽を創ります。すると相手がどう楽譜を読み、音楽を創るかのプロセスが見えるので、楽しみであり、少し怖くもあります(笑)。僕とは違う楽譜の読み方をしている部分が必ずあるはずなので、そこから発見もありそうです。

─それぞれのソロもあります。

鈴木:2台ピアノは大きな曲ばかりなので、ソロは小品から選びました。お昼の時間に親しみやすい音楽をお届けできたらと、僕はショパンのワルツと「舟歌」を演奏します。

岡田:隆ちゃんはショパン好きだものね。私はラモー(ガヴォットと6つのドゥーブル)を選びました。フランス音楽は近代と、バロックなど古い時代の作品も好きで、中でもラモーは今後もずっと弾きたい作曲家です。当時とは異なる現代ピアノで弾くことには難しさもありますが、作品のすばらしさを生の演奏でお届けしたいです。

一期一会の本番に何が起こるか、とても楽しみにしています。

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ー今度の公演は、"昼クラ"という新シリーズ1回目であり、ライヴ配信も行われます。楽しみにしていることがあればお願いします。

鈴木:まずは、リハーサルで音楽を創り上げる過程自体が楽しみで、さらにその音楽をみなさまに披露し、どう受け取っていただけるかもまた楽しみにしているところです。配信も含め、少しでも多くの方に喜んでいただけたらと思います。

岡田:コロナ前は遠方から来てくださる方もいましたが、今はそれがしにくくなりました。でも配信のおかげで、全国から聴いていただけるようになって嬉しいですね。コロナの影響で私もなかなかパリに行けないので、今もパリに拠点のある隆ちゃんの音色からパリを感じたいと思います。リハーサル、そして一期一会の本番に何が沸き起こるか、とても楽しみにしています。

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

昼クラシック

2022年10月21日(金)11:00開演

文京シビックホール 小ホール

出演

ピアノ/岡田 奏、鈴木隆太郎

曲名

モーツァルト/2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448より第1楽章*
ショパン/ワルツ第2番 変イ長調 op.34-1「華麗なる大円舞曲」
ショパン/舟歌 嬰ヘ長調 op.60 
ラヴェル/マ・メール・ロワ*
ラモー/ガヴォットと6つのドゥーブル*
ラフマニノフ/2台のピアノのための組曲 第2番 op.17*

 ...試聴できます(「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」へ移動します)

料金<税込>

全席指定 3,000円 

ライブ配信 1,000円

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)
ライブ配信についてはこちら
 →「昼クラシック」ライブ配信

昼クラ