ジョージア国立バレエ団芸術監督、世界的に有名なプリマ・バレリーナ。
10歳でフィギュア・スケート(ジュニア部門)のジョージア・チャンピョンとなるが、ジョージア舞踊学校に入学し、バレエに転向。数々の国際コンクールでグランプリに輝くなど、輝かしいコンクール歴を誇る。
1981年、ボリショイ・バレエ団に入団。1985年、プリマ・バレリーナに昇格。1988年以降、ロシアのバレリーナとして初めてニューヨーク・シティ・バレエ団、アメリカン・バレエ・シアター、英国ロイヤル・バレエ団等に客演。アメリカン・バレエ・シアターではプリンシパルを16年務めた。
1989年に初来日して以来、日本にはボリショイ・バレエ団、エイフマン・バレエ団、ペルミ・バレエ団、アメリカン・バレエ・シアターの公演に参加するほか、《アナニアシヴィリと世界のスターたち》などの公演でも度々来日。
2004年9月に母国のジョージア(旧グルジア)国立バレエ団の芸術監督に就任。短期間で著しい成果をあげて、バレエ団に第2の黄金時代をもたらしつつある。
2017年4月29日、日本とジョージアの間における文化交流の促進及び日本のバレエ界の発展に寄与した多大なる功績が認められ、旭日中綬章を受章。
「眠れる森の美女」10月7日公演主役ゲストの2人は、ニーナが芸術監督を務めるジョージア国立バレエ団のソリストで、ニーナの推薦により決定した。
オーロラ姫を踊るヌーツァ・チェクラシヴィリはトビリシ(ジョージアの首都)のバレエ学校にいた頃からずっと指導してきたバレリーナです。昔から努力家で、言われたことをきっちり守る誠実な生徒でした。小さい頃からコンクールにも参加して優秀な成績を収めてきましたし、今でもつねに進歩していますね。現在、ジョージア・バレエ団では三人のプリマが活躍していますが、三人ともそれぞれ違う個性を持っています。ヌーツァの特徴はテクニックに秀でていることと、非常に跳躍力があることと、『ジゼル』のような情感豊かな役もこなせること。そして何よりダンサーとして素晴らしい容姿・身体の持ち主なんです。短期間に役作りをしていかなければならないときも、彼女はとても呑み込みがよく、古典からコンテンポラリーまでほとんどの主役を踊っています。
私自身、特に女性ダンサーにとっての手本にならなくてはと思っていますが、くれぐれも私のコピーにならないように、と指導しています。自分の個性をもつことの大切さを、口を酸っぱくして伝えているんですよ。
彼はアメリカ生まれで、アメリカのバレエ学校でトレーニングを受けてきたので、ジョージア・バレエ団のロシアのテクニックをマスターするまでしばらく努力しなければなりませんでしたが、今ではカンパニーの重要なソリストに成長しました。18歳で入団したときは、本当に幼い少年といった雰囲気でしたが、みるみるうちに大人になり、飛躍的な進歩を遂げました。彼は女性ダンサーのサポートも素晴らしいのです。ヌーツァもフィリップも『眠れる森の美女』の演目はガラ公演でハイライトを踊っていますが、全幕は今回が初めて。ジョージア・バレエ団でも近々全幕を上演することになりましたので、今から改定の準備を進めているんですよ。
ええ。DVDで拝見して、衣装も舞台装置もとても美しいヴァージョンだと思いました。『眠れる森の美女』はフランスの童話が原作となっている作品ですし、ロココ的で優雅な牧阿佐美バレヱ団の演出は物語にぴったりだと思います。
だいたい4ヴァージョンくらいかしら…3幕では大きな改変は行われないことが多いので、ほぼボリショイのヴァージョンで踊らせていただいてきました。この作品は、クラシック舞踊の典型的な要素が盛り込まれているので、他の古典作品を踊るときにも、身体を『クラシックに調整する』ために稽古で踊ることが多いのです。特に現代的な作品を踊った後では、ちょっと忘れかけていたクラシックの技術に『磨きをかける』ことができるバレエなのですね。
一幕にとてもブレッシング(呼吸)が難しいシーンがあります。全体としては、スタイル(様式)を意識して、繊細に表現をしていくことが大事。最近の傾向として、『ドン・キホーテ』も『白鳥の湖』も『眠れる森の美女』も、同じように踊ることが多くなってきたと思います。『眠れる森の美女』は手の動きから足の動きまで、優雅に繊細に「ロココ調」に見せていくバレエで、『ドン・キホーテ』と同じであってはいけないのです。王子役にも言えることですね。そしてオーロラが登場する一幕から三幕まで、彼女の成長を見せていくことも大事です。時間の経緯を感じさせるためには、踊りと踊りの間のお芝居も、とても重要になってきます。
とても重要です。客席から見るとなかなかわかりづらいことかも知れませんが、踊り手としてそのことを守り続けてきたからこそ、私自身、長年多くのお客様に支持していただけたのだと思います。私が(ナターリヤ・)ゾロトワ先生から受け継いできた大切なことで、若いダンサーにも伝えていかなければならないと強く思っています。
お稽古をして、非常に優秀なダンサーがいるバレエ団だと感動しています。牧先生の振付も本当に素晴らしい。ジョージアでもこの作品を上演出来たらどんなに素晴らしいことか、と夢見ています。
『眠れる森の美女』には私のバレエ団のダンサーが参加しますし、今後も絆を深めていけたら嬉しいですね。
ヌーツァ・チェクラシヴィリとフィリップ・フェドゥーロフの二人は、若く、エネルギッシュで美しく、高度なテクニックを備えたダンサーです。どうぞ、文京シビックホールで10月に行われる「牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』」公演にご期待ください。
ワフタング・チャブキアーニ国立バレエ芸術学校でL. チュヒクヴィシヴィリに師事。2011年、ジョージア国立バレエ団に入団。「ジゼル」「ドン・キホーテ」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「ラ・フィーユ・マルガルデ」(A.ファジェーチェフ振付)、「火の鳥」(アンドリス・リエパ演出)、「コンセルヴァトワール」(A. ブルノンヴィル振付)などの主役、「セレナーデ」「コンチェルト・バロッコ」「タランテラ」(G.バランシン振付)、「シベリアからモスクワへ」(A. ブルノンヴィル振付)、「ビゼー・ヴァリエーション」(A.ラトマンスキー振付)、「小さな死」「フォーリング・エンジェル」(J.キリアン振付)などの多くの作品でソリストを踊っている。
アメリカ合衆国生まれ。フィラデルフィアのロック・スクールでナターシャ・ゼイガーとセルヴィ・ガラルドの指導を受け、オーランド・バレエII、ヒューストン・バレエII、ニューヨークのアリソン・バレエ団を経て、2013年、ジョージア国立バレエ団にソリストとして入団。「ジゼル」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」「火の鳥」(アンドリス・リエパ演出)の主役、「セレナーデ」「モーツァルティアーナ」「シンフォニー・インC」(G. バランシン振付)、「小さな死」「6つの踊り」(J.キリアン振付)、「サガロベリ」(Y. ポソホフ振付)、「ツナとツルツナ」(ニーナ・アナニアシヴィリ、ジア・マルガニア演出振付)などのソリストを踊っている。2015年、ドメニコ・モドゥーニョ国際バレエ・コンテンポラリーダンス・コンクール(イタリア)で、エカテリーネ・スルマワと共にデュエットの1位を獲得した。
音楽・舞踊ライター。雑誌『ロッキングオン』の編集者を経て、フリーランスのライターに。
クラシック、オペラ、バレエの公演レビューやアーティスト・インタビューを執筆。東京を中心に年間約300のコンサート、リサイタル、舞台公演を取材。
著書に『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のすすめ』(フィルムアート社)。
コンサート・ブログ『小田島久恵のクラシック鑑賞日記』