特集 ~2016年11月19日(土)「シエナ・ウインド・オーケストラfeat.清水和音 MARCH & JAZZ セレクション」~
 清水和音(ピアノ)スペシャルインタビュー

ピアノ 清水和音 Kazune Simizu

 完璧なまでの高い技巧と美しい弱音、豊かな音楽性を兼ね備えた日本を代表するピアニスト。
 ジュネーブ音楽院にて、ルイ・ヒルトブラン氏に師事。1981年、弱冠20歳で、パリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門優勝、あわせてリサイタル賞を受賞した。1982年、デビュー・リサイタルを開く。これまでに、ロジェストヴェンスキーならびにティルソン・トーマス指揮ロンドン交響楽団、ノセダ指揮キーロフ歌劇場管弦楽団、ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団、アシュケナージ指揮シドニー交響楽団、国内ではNHK交響楽団ほか日本全国のオーケストラと共演を重ね、指揮者・オーケストラからは絶大な信頼を得ている。また、室内楽の分野でも活躍。共演者からの信頼も厚い。
 1995年秋から2年にわたって行われた、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲演奏会は、その完成度を新聞紙上で高く評価され、ライヴ録音がリリースされている。
これまでにソニーミュージックやオクタヴィア・レコードなどに多数の録音を残し、各誌で絶賛されている。
 2011年には、デビュー30周年を記念して、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番~第4番とパガニーニの主題による狂詩曲の全5曲を一度に演奏するという快挙を成し遂げた。デビュー35周年を迎えた2016年5月には、ブラームスのピアノ協奏曲第1番及び第2番を熱演。同年4月からは、2ヶ月毎・年6回の室内楽シリーズ「芸劇ブランチ・コンサート」を開始するなど精力的な活動を続けている。2018年までの5年間・年2回のリサイタル・シリーズ「ピアノ主義」では幅広いレパートリーで聴衆を魅了している。

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©Mana Miki

取材・文:柴田克彦 写真:三浦興一

様々な人から影響を受けたことが、自分にとっては大きな力になっています。

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——まずは、デビュー35周年を迎えられてのご感想を。

 よくこんなに長く続いたな……と。思いはそれに尽きます。音楽はスポーツのような肉体の勝負ではなく、表現することが大事ですから、永遠に進歩し続けるのが理想ではあります。したがって毎回、精神的に押しつぶされそうな状態でやってきたので、様々な要因が活動を続ける原動力となりました。特に、指揮者やオーケストラのメンバー、他の楽器の奏者等の音楽家仲間が増えたこと、また音楽家のみならず様々な人から影響を受けたことが、自分にとっては大きな力になっていますね。

——今回、吹奏楽との共演は初めてとのことですが、吹奏楽に触れられた経験はありますか。

 私の出身中学校(赤塚第三中学校)は吹奏楽が盛んでした。当時、普門館で開催していた全日本吹奏楽コンクールにも出ていましたので、演奏を聴きに行ったことはあります。でも正直なところ、音が大きい、クラリネットが多いといったイメージしかないですね(笑)。ただ管楽合奏との共演という意味では、ストラヴィンスキーの「ピアノと管楽器のための協奏曲」と、第1楽章のみ弦楽器のないバルトークの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏した経験はあります。

——文京シビックホールでの演奏経験とその時の印象は?

 <響きの森クラシック・シリーズ>での小林研一郎指揮/東京フィルハーモニー交響楽団とのリストの「ピアノ協奏曲第1番」、世界的ホルン奏者のラデク・バボラークとの共演など、何度か弾いています。印象はいいですよ。ピアニストにとっては、響きよりもピアノの状態で印象が変わるのですが、このホールの楽器はすごく良かったように記憶しています。発音体が良くなければ、会場の響きがいくら良くてもどうにもならないですからね。その点文京シビックホールは、響きを含め、トータルで弾きやすいホールです。

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初めてのことをやるのは楽しい。ですから今回すごく楽しみにしています。

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——今回の演目「ラプソディ・イン・ブルー」は、どのくらい演奏されていますか?

 最初は25年か30年ほど前だと思うのですが、若い頃から弾いていて、10回以上は演奏しています。最も近いところでは、バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団との共演(2014年1月)。これは素晴らしい体験でした。

——この曲の魅力や特徴は?

 やはり楽しいジャズのテイストでしょう。この曲はあくまで“ジャズ・テイストのクラシック”であり、ガーシュウィンはジャズの要素を用いてクラシック作品を書いたのだと思っています。なので、多少は装飾等を入れるにせよ、あまりいじらない方がいいのではないかという気がします。

——ガーシュウィン自身の録音も、譜面通り弾いていますよね。

 そう、作曲者がそれを求めています。「ジャズの雰囲気はもう音符に書いてありますよ」ということです。だから奏者が音を足した演奏があまり成功しているとは思えない。ガーシュウィン自身の演奏がそうであるように、彼が考えていたのは、譜面通りに弾くことだと思います。

——この曲のピアニストとしての面白さは?

 やはり独特のアメリカンな響きですよね。ヨーロピアンではない面白さ。私にとっては唯一のアメリカのレパートリーですから、いつも違和感を抱きながら鳴らしているわけですよ。でもその違和感が楽しい。それに音楽がいつも明るく、悩みがない。これはベートーヴェンにはない個性です。ともかく私はこの曲が大好き。「ラプソディ・イン・ブルー」とラヴェルの協奏曲は、そうした明るさが弾いているときの気持ちを支配する点が魅力です。

——吹奏楽で「ラプソディ・イン・ブルー」を弾くことへの期待は?

 クラシック音楽のダイナミックレンジの広さは、他のジャンルにない魅力。大きな音が出る吹奏楽では、その面でよりコントラストが付けられることになります。そこに新たな可能性がありますよね。いずれにしても初めてのことをやるのは楽しい。ですから今回すごく楽しみにしています。

——指揮の山下一史さんとの共演については?

 以前は何度も共演しましたが、もう20年以上ご一緒していません。学年が1つ違いだった桐朋の高校時代からよく知っていますので、色々な面で近さは感じますし、仕事上で知り合った人と違って、批評するような見方はできないですね。とにかく久々の共演なので、これまた本当に楽しみです。

——この曲は、指揮者によってどのくらい変化するのでしょう?

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 他の曲に比べて、指揮者よりもピアニストによる違いの方が大きいと思います。この曲は何をやってもいいと思っている奏者は結構多いですから。例えば譜面に書いてあるリズムに、ジャズならばこういう感じではないだろうと思える部分が何ヶ所かあるんですよ。そこを思い切りジャズに寄せる人もいるし、真面目に譜割りの通り弾く人もいる。すると必然的にオーケストラの演奏も変わってきます。でもまあ、いくら大真面目に弾いても、ビートを刻むようなノリの良さは、通常のクラシック作品より明らかに強いですし、演奏後は会場中にハッピーな雰囲気が漂いますよね。そうした幸福感を感じさせる点でもいい曲です。

——ちなみに、秋の他の予定は?

 この文京公演前後の9月下旬から11月下旬にかけて「横浜音祭り」に出演し、横浜市内各地で18回のリサイタルを行います。ショパンのノクターン全18曲を公演ごとに振り分け、他の様々な曲を組み合わせながら弾く予定です。

——長時間ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

プロフィール

柴田 克彦(しばた・かつひこ)

音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。
「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「CDジャーナル」「バンド・ジャーナル」等の雑誌、公演プログラム、宣伝媒体、
CDブックレットへの取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や一般の講座も
受け持つなど、幅広く活動中。
文京シビックホールにおける「響きの森クラシック・シリーズ」の曲目解説も長年担当している。

シエナ・ウインド・オーケストラ feat.清水和音 MARCH & JAZZ セレクション

2016年11月19日(土) 15:00開演 文京シビックホール  大ホール

公演情報

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