スペシャルインタビュー 夜クラシックVol.28

エール弦楽四重奏団
スペシャルインタビュー

山根一仁、毛利文香、田原綾子、上野通明からなる「エール弦楽四重奏団」
日本が誇る若きカルテットが、「夜クラシック」シリーズに初登場します
息の合ったアンサンブルで魅せる彼らに
お互いの印象から、本公演のプログラムの聴きどころまで伺いました

夜クラシックVol.28   エール弦楽四重奏団

2021年2月19日(金)19:30開演 文京シビックホール 大ホール

エール弦楽四重奏団_001.jpg【出演】<エール弦楽四重奏団>
    ヴァイオリン/山根一仁、毛利文香
    ヴィオラ/田原綾子
    チェロ/上野通明

【曲目】ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
    シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」
    

エール弦楽四重奏団

山根一仁2016.08.05-253 (C)K.MIURA1.jpg

©K.MIURA

ヴァイオリン

山根一仁

Kazuhito Yamane, violin

1995年生まれ。2010年中学校3年在学中に第79回日本音楽コンクール第1位、レウカディア賞、黒柳賞、鷲見賞、岩谷賞(聴衆賞)、増沢賞を受賞。これまでにバーミンガム市響、NHK交響楽団をはじめ国内外のオーケストラと共演を重ねる。
第60回横浜文化賞文化芸術奨励賞(最年少)、第2回岩谷時子音楽財団Foundation for Youth賞、第25回青山音楽賞新人賞、第26回出光音楽賞、第19回ホテルオークラ賞等受賞。これまでに故富岡萬、水野佐知香、原田幸一郎各氏に師事。現在ドイツ国立ミュンヘン音楽大学に在籍。クリストフ・ポッペン氏のもと、さらに研鑽を積む。
オフィシャルサイト http://kazuhitoyamane.jp/ 

毛利文香014©Hisashi Morifuji2.jpg

©Hisashi Morifuji

ヴァイオリン

毛利 文香

Fumika Mohri, violin

2012年、第8回ソウル国際音楽コンクール第1位。2015年、第54回パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第2位、エリザベート王妃国際音楽コンクール第6位。2019年、モントリオール国際音楽コンクール第3位。これまでに、川崎市アゼリア輝賞、横浜文化賞文化・芸術奨励賞、京都・青山音楽賞新人賞、ホテルオークラ音楽賞受賞。ヴァイオリンを田尻かをり、水野佐知香、原田幸一郎の各氏に師事。桐朋学園大学音楽学部ソリストディプロマコース、及び洗足学園音楽大学アンサンブルアカデミー修了。慶應義塾大学文学部卒業。現在、クロンベルクアカデミーにてミハエラ・マーティン氏に師事。
オフィシャルサイト https://www.fumikamohri.com/

田原綾子©Hisashi Morifuji2.jpg

©Hisashi Morifuji

ヴィオラ

田原綾子

Ayako Tahara, viola

第11回東京音楽コンクール弦楽部門第1位及び聴衆賞、第9回ルーマニア国際音楽コンクール全部門グランプリを受賞。国内外でソロリサイタルを行っており、読売日響、東響、東京フィル等と共演。桐朋学園大学を卒業、現在はパリ・エコールノルマル音楽院にてブルーノ・パスキエ氏、デトモルト音楽大学にてファイト・ヘルテンシュタイン氏のもとで学ぶ。桐朋学園大学院大学特待生、2019年度明治安田QOL文化財団海外留学研修生、Music Dialogueアーティスト。
これまでに藤原浜雄、岡田伸夫の各氏に師事。2015年度宗次エンジェル基金奨学生、2015、2016年度ローム音楽財団奨学生、第47回江副記念財団奨学生。
オフィシャルサイト  https://www.ayakotahara.com/

上野通明.jpg

チェロ

上野通明

Michiaki Ueno,cello

第6回若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール日本人初の優勝、第6回ルーマニア国際音楽コンクール最年少第1位、第21回ブラームス国際コンクール優勝、第11回ルトスワフスキ国際チェロコンクール第2位。 
桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマコース全額免除特待生として毛利伯郎氏に師事した後、19歳で渡独。現在デュッセルドルフ音楽大学にて、P.ウィスペルウェイに師事。ヨーロッパ、ドイツ国内でも活発な演奏活動を始めつつ、更なる研鑽を積む。
岩谷時子音楽文化振興財団 第1回Foundation for Youth、第6回岩谷時子賞 奨励賞、2017年第26回青山音楽賞新人賞受賞。



取材・文:高坂はる香

メンバー全員、明確な景色を持ちながら柔軟な思考も備えている

─ドビュッシーの弦楽四重奏曲の魅力は、どのようなところに感じますか?

山根:今回このコンサートに際して、我々が初めて勉強する作品です。高校生の頃は、同じフランスの作曲家でも、ラヴェルの弦楽四重奏曲の繊細さや和声の軽やかさに、より魅力を感じ、勉強した記憶があります。でも今回、改めてドビュッシーの弦楽四重奏曲を聴いて、重厚なメロディや色彩豊かな和声の変遷に魅せられています。初めて聴いた頃より、とても良い印象を持つようになりました。楽譜を読んでいくとまた違った発見があると思います。僕個人の発見と他の3人の発見が、どのように交わり発展していくか、楽しみです。

田原:たった4つの楽器で作り出しているとは思えない、ドビュッシーらしい色彩感にあふれているところが魅力です。分厚く力強い響きや、静かな湖のような美しい旋律がちりばめられています。

毛利:私は、目まぐるしく変わっていく色彩が魅力だと感じます。個人的には、師匠である原田幸一郎先生が第1ヴァイオリンを務める東京カルテットの録音を初めて聴いた時の印象が強いです。

上野:ドラマチックな部分や甘美な部分もあり、いろいろなキャラクターを楽しめる曲だと思います。また、冒頭のテーマが最後までさまざまな形に変化しながら何度も現れるので、聴いている方は、さまざまな地に足を運び、思いもよらぬものを見たり経験したりしながら旅をする主人公の物語を想像することもできるのではないでしょうか。

─シューベルトの「死と乙女」は、みなさんが高校生の頃から演奏されているレパートリーかと思います。当時、シューベルトの後期作品であるこの曲に取り組んだ理由、時を経て感じることの変化などをお聞かせください。

毛利:当時はカルテットの奥深さや難しさもたいして知らぬまま、とにかく「このかっこいい曲を弾きたい!」と、あの時にしかない初々しいエネルギーをもってのめり込んでいた気がします。その後、それぞれが経験を積み、今はより多面的な視野を持って楽譜に向き合えるようになったと思います。ある意味また「ゼロ」から取り組むことになります。

田原:高校生の時にこの大曲を勉強できた時間は、とても貴重で大切だったと思います。憧れの曲を弾きたいという気持ちで、シューベルトの歌心や和声の移り変わりにただ感激しながら、必死に向き合いました。今後も一生かけて学んでいかなくてはならない作品ですが、10年ほど経ち、ほんの少しでも成長した今の自分たちにこの作品がどう見えるか、楽しみです。

上野:当時はカルテットの経験自体ほとんどなかったので、シューベルトというより、カルテットそのものの難しさに苦労しながら、ただ感性をぶつけ合って弾いていたように思います。あれ以来、シューベルトの他の曲に触れる機会がたくさんありました。改めてシューベルト像をより深く理解した上で、彼が迫る死に気づき、人生に絶望的だった頃に書いたこの曲をどうみんなで表現できるか、楽しみにしています。

山根:個人的なことをいうと、シューベルトを好きになったのはここ数年のことです。偉大な作品である「死と乙女」は、高校生の時に勉強して以来大好きな作品ですが、それ以外にシューベルトの音楽を勉強したことがありませんでした。卒業後、ドイツに留学し、シューベルトの他の作品を勉強する機会に恵まれ、その魅力に気づくことができました。今後も絶えず勉強していきたいと思っています。

─4人で1つの作品をつくりあげていくときは、どのような行程がとられるのでしょうか? リハーサルの様子をお聞かせください。

上野:基本的に皆で意見を出し合っています。気づくと話が逸れて、ただの雑談になっていることもしばしばです(笑)。

山根:全員、明確な景色を持ちながら柔軟な思考も備えているので、意見をぶつけ合いながらも、毎回良い着地点を見つけられています。

田原:自然とまとまることも多いですが、もしも納得できない場所があれば、そこがクリアになるまでいろいろ試し、よりよい表現にならないかを考えたりしています。

毛利:いつも一度始めると、誰も休みたいと言い出さず、長時間練習し続けている気がします。

音楽家として刺激しあう仲間

─お互いに初めて会った時の印象は覚えていますか?

田原:山根くんは小学生の時に河口湖のセミナーで、毛利さんとも同じく小学生の頃、音楽教室での弦楽アンサンブルで知り合い、上野くんは高校からの付き合いです。それぞれに個性豊かなメンバーで、気が付いたら側にいたという感覚です。

上野:田原さんはいつも明るいムードメーカー、毛利さんはしっかり者で飾らない性格という印象でした。山根くんは、高校に入って同級生として知り合い、とてもオープンでアクティブな子だなと思っていたところ、このカルテットをはじめようと声をかけてくれました。そのおかげで毛利さんや田原さんとも知り合いました。

山根:上野くんは、とても静かな子というのが第一印象...と思っていたら、僕の当時のメールアドレスのスペルミスを指摘してそれをイジってくる一面が見え始め、仲良くなれそうだなと感じました。田原さんとは、小学校高学年の頃にヴァイオリンの講習会で会っていて、今は見ることのできない僕のやんちゃな姿を知っている、数少ない人かもしれません。毛利さんとは6歳の頃から同じ先生に習っていたこともあり、印象という印象はありません。昔からよく知っている友達が今も同じ分野で活動していて、かつ一緒に演奏する機会があるというのは、音楽の世界ならではの現象なのかなと思います。

毛利:私も正直なところ、当時の印象はあまり覚えていません(笑)。山根くんとちゃんと話し始めたのは、なぜか中学生の頃でした。田原さんともなぜか最初はあまり話さなかったのですが、いつも友達に囲まれていて明るい印象でした。上野くんと会ったのは高校に入ってからでしたが、たしか中学生の時にコンクールで見かけたことがあり、当時から有名で、すごいチェロ少年というイメージでした(笑)。

─高校以来、時折集合してカルテットとして演奏されるなか、お互いの変化を感じることはありますか? また、4人集まると必ずすることなどがあれば教えてください。

山根:さまざまな場面でメンバーの変化を感じますし、これからも感じてゆくのだろうと思います。そういった刺激が音楽家として、一人の人間としての自分を形成していると感じます。すばらしい仲間からさまざまなことを受け取り、成長に繋げていきたいです。

毛利:全員留学し、それぞれ技術的にも音楽的にも確実に変化していると感じます。自分も変化しているからこそ感じる部分もあるでしょうから、そういう意味では、それぞれがより敏感にお互いに反応するようになったのではないかと思います。付き合いが長く、家族のような雰囲気なので、いつも集まると話している時間が長くなりがちです(笑)。

田原:久しぶりに会うたびに、みんなやっぱり変わらないなあと感じますが、ただ楽器を構えれば、それぞれ刺激を受けながら日々を過ごしてきたことが、言葉にしなくても伝わってきます。時間があればリハの合間に4人でご飯を食べに行きますし、おしゃべりの多いカルテットです。

上野:3人ともすばらしい音楽家で忙しいので、4人で頻繁に演奏することはできませんが、別々の場所に留学して、いろいろなことを吸収した上で集まると、いつもとても刺激的です。みんなで富士急ハイランドに行ったり、クリスマス前夜に遊んだり、同僚というより大切な友人達でもあります。カルテットを一緒に楽しめる良い仲間に恵まれて、本当によかったです。

プロフィール

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.28 エール弦楽四重奏団


2021年2月19日(金) 19:30開演(18:30開場)

文京シビックホール 大ホール

出演

<エール弦楽四重奏団>
ヴァイオリン/山根一仁、毛利文香
ヴィオラ/田原綾子
チェロ/上野通明

曲名

ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 Op.10
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」

料金《全席指定・税込》

S席 3,000円 A席 2,000円

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10:00~19:00/土・日・祝休日も受付。)
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チケット発売

■購入者先行販売
2021年1月16日(土)・17日(日) 各日 10:00~18:30
※2日間限定。シビックチケット電話受付のみ。お一人様4枚まで、席選択可。
※今年度セット券をご購入いただいたお客様が対象です。

■区民先行発売
2021年1月18日(月)10:00~18:30
※1日限定。シビックチケット電話受付のみ。お一人様4枚まで、お席は選べません。


■メンバーズ先行発売
2021年1月19日(火) 10:00~ 2021年1月20日(水) 23:59
※席選択可


■一般発売
2021年1月23日(土)10:00~
※発売初日はお一人様4枚まで、お席は選べません。
※メンバーズのみ発売初日より席選択可。

エール弦楽四重奏団_001.jpg