スペシャルインタビュー 山田和樹×東京混声合唱団

~2020年6月7日(日)「山田和樹 × 東京混声合唱団 アンセム(愛唱歌)コンサート 」~

山田和樹(指揮)
德永祐一(東京混声合唱団コンサートマスター)
スペシャルインタビュー

世界各地で世代を超えて歌い継がれるアンセム(国歌や愛唱歌)を
東京混声合唱団の粋なアレンジでお届けする、夢の合唱コンサート
同団の音楽監督も務め、精力的にアンセム・プロジェクトに取り組む指揮者・山田和樹と
同じく合唱団のコンサートマスター 德永祐一に、
本公演への意気込みをうかがいました!

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©平館 平

指揮

山田和樹

Kazuki Yamada


2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ほどなくBBC交響楽団を指揮してヨーロッパ・デビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管弦楽団を指揮して以来、破竹の勢いで活躍の場を広げている。2016/2017シーズンから、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督兼音楽監督、218/2019シーズンからバーミンガム市交響楽団の首席客演指揮者に就任。
日本では、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、読売日本交響楽団首席客演指揮者、東京混声合唱団音楽監督兼理事長などを務めている。2016年には、実行委員会代表を務めた「柴田南雄生誕100 年・没後20年記念演奏会」が、平成28年度文化庁芸術祭大賞を受賞。
これまでに、ドレスデン国立歌劇場管、パリ管、フィルハーモニア管、ベルリン放送響、バーミンガム市響、サンクトペテルブルグ・フィル、チェコ・フィル、ストラスブール・フィル、エーテボリ響、ユタ響など各地の主要オーケストラでの客演を重ねている。
東京藝術大学指揮科で小林研一郎・松尾葉子の両氏に師事。メディアへの出演も多く、音楽を広く深く愉しもうとする姿勢は多くの共感を集めている。ベルリン在住。

オフィシャル・ホームページ http://www.kazukiyamada.com/





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©Kyoichi Komazaki

合唱

東京混声合唱団

The Philharmonic Chorus of Tokyo

1956年、東京芸術大学声楽科の卒業生により創設された日本を代表するプロ合唱団。コンサートの開催を演奏活動の中心に置き、広範な分野の合唱作品の開拓と普及に取り組んでいる。東京、大阪での定期演奏会、各地での特別演奏会、内外のオーケストラとの共演やオペラへの出演、青少年を対象とした鑑賞音楽教室、海外公演を含む年間200回の公演のほか、レコーディングやテレビ、ラジオへの出演がある。レパートリーは、創立以来行っている作曲委嘱活動で生まれた203曲を数える作品群をはじめ、内外の古典から現代作品までと全合唱分野を網羅している。1996年より日本を代表する芸術団体として「文化庁特別重点支援」の指名を受けている。2007年、サントリー音楽賞、中島健蔵音楽賞を受賞。2010年7月にフィンランド公演を開催し絶賛を博した。
2014年4月より山田和樹が音楽監督を務めている。

オフィシャル・ホームページ http://toukon1956.com


取材・文:高坂はる香  写真:三浦興一

山田和樹(指揮) インタビュー

ー今回の公演は、文京シビックホール開館20周年プロジェクトの一環でもあります。文京シビックホールの思い出はありますか?

 実は文京シビックホールには、開館当時とてもお世話になりました。学生時代に仲間と結成したTOMATOフィルハーモニー管弦楽団(現・横浜シンフォニエッタ)で、大学卒業後の練習会場としてこちらの練習室をよく利用していたんです。軽く200回は通っていますよ!

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ー東京2020に向けて2018年にスタートしたアンセム・プロジェクトでは、演奏会と同時に録音も行い、6月には206ヵ国の国歌を収録したCDボックスがリリースされます。ここまで進めてみてどう感じていますか?

 プロジェクトを最初に思いついたときは、本当に実現できるのか全く先が見えませんでした。馴染みのない言語をどう扱うかという問題もありました。それでもとにかくやってみよう!と、ほとんど見切り発車でしたが(笑)、結果的にはみなさんのご協力でここまで進められました。

 実際やってみると、多くのことを考えさせられました。世界にはたくさんの国があり、そこに線があるわけではないけれど国境というもので分けられ、違う文化や言葉がある。

 世界平和は理想ですが、実現は簡単ではありません。だけど、どなたかがおっしゃっていました。美しいものをみんなが共有し、わかりあえたとき、戦争はなくなるだろうと。

 その意味で、世界の国一つ一つに歌があるのはとてもすてきなことだと改めて認識しました。平和のために音楽ができることは限られていますが、少なくとも、みなさんにとって何かを考えるきっかけになればと思います。

ー公演では、文京区ゆかりの国に加えて、山田さん一押しだというコモロ連合の国歌が演奏されます。

 プロジェクトを始めるにあたって、最初に全ての国歌をピアノで弾いてみたのですが、その中でコモロ連合の国歌には、芸術的なおもしろさを一番感じました。歌とハーモニーにパワーがあるのです。でも、コモロ連合がどんな国なのかは私も知りませんでしたから、調べました。そんなふうに、みなさんにも国歌をきっかけに、知らなかった国に関心を持っていただけたら良いですね。

 その後コモロ連合国歌をインターネットに載せたところ、コモロ連合からのアクセスがけっこうあるようなんです。もしかしたら「我々の国歌がなんで日本で歌われているんだ?」なんてザワザワしている方々がいるのかも。おもしろいですよね。

ーそのほか公演の聴きどころは?

 第1部では国歌に加え、愛唱歌を交えたメドレーも演奏します。とても楽しい仕上がりになっていますので、曲を通じて世界を一周していただけたらと思います。

 第2部では「さくらさくら」や「おもちゃのチャチャチャ」など、日本の愛唱歌をお届けします。"老若男女問わず楽しめる"......なんていうとよくあるキャッチフレーズのようで嫌なのですが(笑)、実際今、おじいちゃんおばあちゃんから孫まで、みんなで一緒に歌える歌が減ってきていますから、そういう曲を、東京混声合唱団の素敵なアレンジで届けたいと思っています。日曜の午後、三世代で来ていただけたら嬉しいですね。

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ー子どもたちにとっては、普段自分たちが歌っている曲もたくさん登場するでしょう。プロの歌で聞くとまた印象が変わるかもしれませんね。

 はい、でも私の意見では、プロの歌を届けることへのこだわりよりは、楽しんでさえいただければという気持ちが強いですね。というのも、プロはうまい演奏さえ提供すれば良いという時代は、もう終わっていると思うから。

 プロがすべき一番大切なことは、原点に触れるということ。例えば合唱なら、なぜ人は歌うのか、なぜ各国が歌を持っているのかを考えていなくてはいけない。

 今は社会の中に音楽が存在していますが、もともと人は社会がなくても歌っていたはずです。それは喜びを感じるためかもしれないし、雨が降らないことを嘆いて叫んでいただけかもしれない。プロは、そうした根源的な部分を意識していないといけません。そうすることで、聴きにきた方が、自分たちも歌いたくて居ても立ってもいられない!という音楽を届けられると思うのです。

 昔は、西洋から来たクラシック音楽はありがたく拝聴するものというイメージがあったかもしれません。でも、もう今は違います。

 今回も例えば、「幸せなら手をたたこう」などでは客席のみなさんにも参加していただきます。私たちが舞台から一方的に配信するのではなく、お客さんと一緒に演奏会を作る工夫をもっとしていきたいと思っています。



德永祐一(東京混声合唱団コンサートマスター) インタビュー

ーさまざまな言語で歌うことは大変でしたか?

 大変でしたねぇ...(笑)。普段のレパートリーで使われる言語は限られていますから、それ以外はゼロからのスタートでした。とくに文字も楽譜も右から左に記すアラビア系の言語は大変でしたね。 

 基本的には、国際発音記号を頼りに勉強し、あとは東京外国語大学の先生のレクチャーを受けたり、各国の大使館の方にチェックしていただいたりして練習を重ねました。ただ、最初は戸惑っていましたが、アラビア語なども一度マスターすれば、あとはトントン拍子でしたね。

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ー特に魅力を感じた言語は?

 その言語にしかない発音方法があるグルジア語や、ミャンマー語、ベトナム語はおもしろかったです。また、山田さんもお気に入りのコモロ連合国歌は、共感を持って歌うことができて音楽的におもしろかったです。

 どの言語もかなり修練しましたから、私たちとしても自信になりました。ちょうどレコーディングを終えたあとラグビーのワールドカップがありましたが、各国チームの国歌を聴くと口ずさむことができるので、より応援したくなりました(笑)。

ー今後は何語のレパートリーを歌うことになっても怖いものなしですね。プロジェクト開始時の記者会見で、山田和樹さんは「これが終わるころ東混は世界最強になる」とおっしゃっていたようですが。

 手応えは感じています(笑)。一つのアイデアが芽吹いたことにはじまり、今や一本の大きな木のようになりました。今回のアンセム・プロジェクトは、器楽演奏や主旋律の歌だけでなく、合唱でできたことが大きかったと思います。合唱団の一番良いところを発揮できました。

ー国によって、宗教的なもの、戦っても国を守ろうと歌うものなど、歌詞の方向性もかなり異なるそうですが、歌いながら気持ちに違いはありますか?

 そうですね、それぞれの国歌にはキーワードがあり、音楽もそれに倣って違ってきます。歌っていると、普段の私たちの生活では生まれない感情が呼び起こされることもありました。

 例えば、国にとって大切な独立という言葉はよく出て来ます。とくに植民地下から独立を果たした国などは、それによって勝ち得たものを歌っていることが多くみられました。国歌とあわせて愛唱歌も取り上げたことで、人々の生活やメンタリティを知ることになりました。

 改めて考えてみると、これは私たち日本の合唱団だからこそできたのかもしれません。他国の国歌を歌おうと思っても、宗教や信念などの違いでうまくいかないケースも多いと思うのです。ですが日本の場合は、八百万の神の精神というか、あらゆるものを受け入れる感覚があるので、こうしたプロジェクトも実現できたのかなと感じました。

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

        

山田和樹×東京混声合唱団 アンセム(愛唱歌)コンサート

2020年6月7日(日)14:00開演

文京シビックホール 大ホール

出演

指揮/山田和樹
合唱/東京混声合唱団
演奏/斎木ユリ(ピアノ)、弦楽アンサンブル

曲名

第1部<音楽で描く世界地図>
~文京区にゆかりのある都市・国の国歌とともに~
ドイツ連邦共和国、トルコ共和国、ベナン共和国、中華人民共和国、コモロ連合 ほか

第2部<音楽とともに夢の旅へ>
さくらさくら、翼をください、おもちゃのチャチャチャ、幸せなら手をたたこう ほか

料金

S席 3,000円 A席 2,000円<全席指定・税込>

学生割引あり
S席2,000円 A席1,500円にて販売。
※学生割引はシビックチケットのみ(窓口・電話予約)での取扱いとなります。
※ご入場時に必ず学生証を提示ください。
 提示が無い場合は、当日受付にて通常価格との差額をお支払いただきます。


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お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。ただし、5/17[日]は休業。)

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