スペシャルインタビュー 夜クラシックVol.23

~2019年11月8日(金)「夜クラシックVol.23」~

三浦一馬(バンドネオン)/村治奏一(ギター)/細川千尋(ピアノ)
スペシャルインタビュー

実力派アーティストが数々の名曲を
気さくなトークを交えながらお届けする室内楽シリーズ"夜クラシック"。
三浦一馬、村治奏一、細川千尋を含め、シリーズ最多、9名の演奏家が登場する
本公演への意気込みをうかがいました!

三浦一馬

         ©Shigeto Imura

バンドネオン

三浦一馬

Kazuma Miura

10歳よりバンドネオンを始め、小松亮太に師事。2006年に別府アルゲリッチ音楽祭にてバンドネオン界の最高峰ネストル・マルコーニと出会い、その後自作CDの売上で渡航費を捻出してアルゼンチンに渡り、現在に至るまで氏に師事。08年国際ピアソラ・コンクールで日本人初、史上最年少で準優勝。09年、ビクターエンタテインメント(株)よりCDデビュー。2011年別府アルゲリッチ音楽祭に出演し、マルタ・アルゲリッチやユーリー・バシュメットらと共演して大きな話題と絶賛を呼んだ。2017年には自らが率いる室内オーケストラ「東京グランド・ソロイスツ」を結成。同年11月には埼玉県「久喜市くき親善大使」に就任。

村治奏一

         ©Shigeto Imura

ギター

村治奏一

Soichi Muraji

1997年クラシカル・ギター・コンクール、98年スペイン・ギター音楽コンクール、第41回東京国際ギター・コンクールに続けて優勝。2003年ボストンの総合芸術高校音楽科を首席で卒業し、ビクター・エンタテインメントよりリリースしたデビューアルバム『シャコンヌ』がレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。12年「トヨタ・クラシックス・アジアツアー2012」のソリストに抜擢、ウィーン室内管弦楽団と共にアジア5カ国でのコンサートツアーを成功させた。13SR財団ワシントン・アワードを受賞。14年、初のコンチェルトアルバム『コラージュ・デ・アランフェス』(平成26年度文化庁芸術祭参加作品)をキングレコードよりリリース。2016年秋には、自身でプロデュースしたソロアルバム『Off the Record』をテレビマンユニオンよりリリース。これまでにNHK交響楽団をはじめ内外のオーケストラと多数共演。

細川千尋

           ©Ai Ueda

ピアノ

細川千尋

Chihiro Hosokawa

富山県出身。2013年、スイスのモントルー・ジャズ・フェスティバル・ソロ・ピアノ・コンペティションにて、日本人女性初のファイナリストとなる。これまでに、イタリア、スイス、ベルギーでソロ・リサイタルを開催。20172月大阪交響楽団との熱演が大好評を博し、この度再演に至る。最新CDは鳥越啓介(ベース)と石川智(ドラム)とのトリオで『CHIHIRO』をリリース。同トリオにて行われた浜離宮朝日ホールでの公演は、本人アレンジによるクラシック曲のジャズアレンジが高い評価を受け話題を呼ぶ。昭和音楽大学大学院修了。現在、昭和音楽大学附属ピアノアートアカデミーに在籍。江口文子氏に師事。


取材・文:高坂はる香  写真:星ひかる

野性的な感性に従った音楽が生まれそう

ー今回はお三方を中心に、『夜クラシック』史上最大となる9人の演奏家が共演されます。この企画はどのようにして生まれたのですか?

三浦:これまでに、奏一さんと千尋さんそれぞれとの共演はありましたが、3人揃っての共演は今回の夜クラシックが初めてです。以前からのレパートリーのいいところを凝縮し、それを軸にプログラムを加えていくなかで、弦楽器をいれてみよう、パーカッションもあったらいいんじゃないかといっていたら、これだけ増えて史上最多になりました(笑)。曲目は、いろいろなものがごちゃまぜになっているように見えるかもしれませんが、実はそれぞれの得意な部分がよくわかる構成になっています。

ーそれぞれの得意分野で楽しみにしているのは、どんなところでしょうか?

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村治:まず、夜クラシックのテーマ曲「月の光」は、ギターとバンドネオンの二重奏による新しいアレンジで演奏します。クラシックギターの一番の魅力は、弱音の美しさ。こうした小さな編成の作品を大ホールで弾くとどんな風に響くのか、楽しみです。

三浦:バンドネオンと弦楽五重奏によるモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」序曲は、今回初めて公の場で披露するので楽しみですね。弦楽パートはほぼ原曲の雰囲気のままで、本来、管楽器がバトンタッチしながら演奏していくパートを、僕がバンドネオンで演奏していくアレンジになっています。

細川:私はやっぱりジャズピアニストとして、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」をこの夜でしかありえない編成とサウンドで演奏することが楽しみです。きっと私は、ジャズのテイストをどんどん入れて弾きたくなると思います(笑)。

三浦:僕もそこに期待しているんです。この編成のためのアレンジ楽譜はもちろん用意しますが、本番ではそこに千尋さんが、瞬間的に生まれる音楽をズバッと差し込み、他のメンバーも反応していくことになると思います。ジャンルを超えて、本番ならではの野生的な感性に従った音楽が生まれそうです。

ー村治さんと三浦さんは10年ほど前から何度も共演されていますが、初めて共演された時の思い出はありますか?

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村治:初共演は、コンサートホールじゃなくてプラネタリウムだったんですよね。星を見ながら聴いていただくというもので、真っ暗な中、手元だけ見える状況で演奏しました。お互いの音に没頭できて、結構楽しかったですね。

三浦:そのときのことでいうと、すごく印象に残っている出来事があって。本番中、奏一さんが何かのハプニングで楽譜がめくれなかったみたいで、もう間に合わない!となったとき、すごい集中力で、究極の状況だからこそ生まれるという感じの演奏を聴かせてくれたんです。奏一さんは覚えていないかもしれませんけど。

村治:覚えていますよ......恐怖体験でしたからね(笑)。

ー今度の『夜クラ』も暗闇の中でスタートしますね、そのときと全く同じように。

村治:やめてくださいよ(笑)。

どんな化学反応が起きるのか楽しみ

ー共演を繰り返す中、音楽を新鮮に保つ秘訣はなんでしょうか。

村治:アンサンブルでは、相手の音を聴くことにほとんどの意識を割くことになりますが、そこで入ってくる音が今まで聴いたことのない音だと、自分の中の新しい引き出しが見つかって、こんな表現ができたんだと感じるんですよね。一馬くんとは年に2、3回共演していますが、そのたびに成長して違う音を聴かせてくれるので、毎回自分でもこんなことができたんだという驚きがあります。だからこちらも、こうやって弾いたら驚くんじゃないかと事前に用意しておいて、リハーサルで突然出したりしますね。

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三浦:奏一さん、本番でもやるじゃないですか! びっくりしたことが何度もありますよ(笑)。

村治:そうだっけ(笑)。でも、それこそが長く一緒にやっていく秘訣ですよね。今回はデュオ以外の編成でも初めて共演できるので楽しみです。これだけ演奏家がいるので、音の引き出しの数も相当増えるのではないかと思います。

ー細川さんは、お二人と共演するにあたって楽しみにしていることはありますか?

細川:奏一さんのクラシックギターは、神経を研ぎ澄まし、集中して弾かれる弱音が魅力なので、その音を邪魔しないようにスペースをしっかりつくって弾きたいと思います。奏一さんワールドの中に『千尋部屋』を開設して、音楽を繊細に作り上げる秘訣を学びたいです。でも同時に、私がピアノでガンガン入っていったら奏一さんは一体どうなってしまうのかという興味もあります。急に頭を振りながら激しい演奏をするなんていうことがあったりして(笑)。
一馬くんとは、以前ピアソラの「リベルタンゴ」を一緒に演奏したとき、私がすごく速いテンポで弾き始めちゃって、一馬くんが大変そうだったことがありました(笑)。でも結果的には、ライブ感があっていい演奏になったと思います。今回はどんな化学反応が起きるのか楽しみです。

ー三浦さんは、他のお二人についてどんな印象をお持ちですか?

三浦:奏一さんは、僕がデビューする前から第一線で活躍されている憧れの存在でした。高校生の頃、休み時間にはよく奏一さんのアルバムをウォークマンで聴いていたので、こうしてご一緒できるようになって本当に嬉しいんです。奏一さんのギターからは、この音じゃなきゃダメなんだという説得力が感じられます。ご一緒する公演では、奏一さんのソロを舞台袖の小窓からよく覗くのですが、演奏中、背中から青白い炎がメラメラと燃えているのが見えるんですよね。これからもその背中を追いかけていきたいです。
千尋さんは、ご覧のとおりのかわいらしい方なのですが、本番での変化が本当にすごい。場を盛り上げるセンスといい、信じられないようなパフォーマンスといい、ステージを知り尽くしている天性のミュージシャンだと感じます。

特別な夜になりますよ

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ー『夜クラシック』ということで、みなさんが夜をどんな風に過ごしていらっしゃるかお聞きしたいのですが。夜型、朝型どちらでしょう。

村治:一馬くんは、夜型を通り越しているよね。連絡するときは、時差を考えないといけない(笑)。

三浦:日本にいながら、アルゼンチン時間で生きています(笑)。じっくり譜面を書く仕事は、真夜中の方が落ち着くんですよね。

細川:わかる。私も外に出て人に会う時期もあるけれど、集中して書かなくてはいけない仕事がある時期は、家にいて、仮眠して書いてを繰り返す生活が続きます。

三浦:その時期がないとメリハリが出ないみたいなところもあるよね。両方の時期が必要なんだと思います。

村治:僕は朝型ですね。4時くらいに起きます。

細川:えー! うちの父みたい(笑)。

村治:僕の場合は1日の中でオンオフをはっきりさせるようにしているんです。調子が上がってくるといつまでも練習してしまうから、ある時間を過ぎたら一切ギターに触れないと決めています。

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ー最後に、『夜クラシック』ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

細川:この日にしか聴くことができない音楽で、特別な夜になりますよ!

村治:クラシックから映画音楽、ピアソラやガーシュウィンまで、それぞれの良さを引き出す演奏に集中したいと思います。これだけいろいろな音楽が一度に聴ける演奏会はなかなかないと思いますので、楽しみにしていただきたいです。

三浦:このメンバーとプログラムですから、間違いなく盛り上がると思います。いい時間にしましょう!

取材・文:高坂はる香(こうさかはるか)

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.23

2019年11月8日(金)19:30開演

文京シビックホール 大ホール

出演

バンドネオン/三浦一馬
ギター/村治奏一
ピアノ/細川千尋
ヴァイオリン/西江辰郎、ビルマン聡平
ヴィオラ/須田祥子
チェロ/富岡廉太郎
コントラバス/黒木岩寿
パーカッション/石川 智

曲名

ドビュッシー:月の光
マイヤーズ:カヴァティーナ
ヴィヴァルディ:リュート協奏曲 ニ長調 RV 93
モーツァルト:「コシ・ファン・トゥッテ」序曲
アンダーソン:舞踏会の美女
ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
ピアソラ:アレグロ・タンガービレ
ガーシュウィン・メドレー
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー

料金

S席 3,000円 A席 2,000円<全席指定・税込>

お問い合わせ

シビックチケット 03-5803-1111(10時~19時/土・日・祝休日も受付。)

夜クラ23