夜クラシック 2019-2020シーズン ラインアップ紹介

文:高坂はる香

 夜のひとときを、約90分の充実したプログラムで彩る、文京シビックホール「夜クラシック」。仕事帰りに立ち寄りやすい19時30分という開演時間と、優れた出演者のラインアップが好評で、シリーズは5周年を迎える。
 曲の聴きどころを知り、演奏家のキャラクターを垣間見られるトークをはさむ構成で、クラシック音楽ファンはもちろん、普段クラシックになじみのない方でもリラックスして楽しめる内容。また、各回の冒頭で演奏されるシリーズテーマ曲、ドビュッシーの「月の光」を、さまざまな奏者や楽器のアレンジで聴くことができるのも、楽しみのひとつだ。
 今シーズンは、上野星矢(フルート)&吉野直子(ハープ)という初登場アーティストの共演、名手が集うスペシャル編成のアンサンブルによる公演など、シリーズ初となる企画も盛りだくさん。また、「夜クラシック」の顔ともいえるピアニストの仲道郁代は、日本のチェロ界を代表する堤 剛と登場する。
 5周年を迎えた特別なシーズンも、聴き逃せない公演ばかり。それぞれの演奏会の聴きどころをご紹介する。

Vol.21

2019年7月5日(金)19:30開演

  • 上野星矢

  • 吉野直子

    ©Akira Muto

出演/曲目

 気鋭の若手フルート奏者、上野星矢と、長年世界で活躍し続けるベテランハープ奏者の吉野直子。夜クラシック初登場の二人が、木管楽器と撥弦楽器による魅惑のアンサンブルを繰り広げる。
 2008年フランスのジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールで優勝、パリ国立高等音楽院で学んだ上野星矢は、その圧倒的な技術、音楽性で注目を集めるフルーティスト。ミュンヘンとパリを拠点に、国内外でクリエイティブな活動を行っている。
 一方、ロンドンに生まれ、アメリカで幼少期からハープを学んだ吉野直子は、10代半ばで数々の国際コンクールに入賞。国内外数々の著名指揮者、オーケストラからソリストとして招かれる、日本が世界に誇るハーピスト。
 かつてモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」で共演している二人。今回は両者の繊細な表現力が絡み合う、デュオのステージに立つ。取り上げるのは、ドビュッシー「月の光」からつながるフランス音楽の世界。フォーレ、ダマーズ、ビゼーの作品で、美しい風景、多彩な色と輝きが目前に浮かぶような、魅惑の音楽を届ける。

Vol.22

2019年9月27日(金)19:30開演

 シリーズ5回目の登場となる、人気ピアニストの仲道郁代。これまで、ソロや若手奏者とのトリオ、姉妹ピアノデュオなどで「夜クラシック」のステージに立ち、多彩な音楽の魅力を私たちに届けてくれた。そんな彼女が今回パートナーに迎えるのは、チェロ界の巨匠、堤 剛。日本のクラシック音楽界を牽引してきた重鎮であり、年を重ね、ますます深まる音楽性をもって演奏活動を続ける、名チェリストだ。
 これまでにも、ベートーヴェンのチェロソナタ全曲演奏シリーズをはじめとする数々の舞台で共演している二人。今回は、ベートーヴェンの「モーツァルト『魔笛』“娘か女か”の主題による12の変奏曲 」に加え、ベートーヴェンの5曲のチェロソナタのうちもっとも広く知られている第3番、そして、偉大なる先達ベートーヴェンの影響が感じられる、ブラームスのチェロソナタ第1番を演奏する。
 秋の夜、人気、実力ともに一流の二人が奏でる、深くしっとりとしたドイツ音楽の世界に身を委ねる。そんな素敵なひとときとなりそうだ。

  • 堤 剛

    ©鍋島徳恭

  • 仲道郁代

    ©Kiyotaka Saito

出演/曲目

Vol.23

2019年11月8日(金)19:30開演

  • 三浦一馬

    ©Shigeto Imura

  • 村治奏一

    ©Shigeto Imura

  • 細川千尋

    ©Ai Ueda

  • 西江辰郎

    ©Kazuhiko Suzuki

  • ビルマン聡平

  • 須田祥子

  • 富岡廉太郎

  • 黒木岩寿

    ©Shigeto Imura

  • 石川 智

    ©藤本史昭

出演/曲目

 「夜クラシック」Vol.23は、バンドネオンの三浦一馬、クラシックギターの村治奏一、ピアノの細川千尋に、弦楽五重奏とパーカッションの石川智が加わった、スペシャルな編成でお届けする。
 まず楽しみなのは、ギターの歌心が存分に味わえる「カヴァティーナ」や、バンドネオンの名曲、ピアソラの「ブエノスアイレスの冬」など、気鋭奏者の音色をたっぷり味わえる作品。バンドネオンとギター、そして今注目の若手ジャズピアニスト、細川千尋のピアノが出会うことで生まれるあたたかく懐かしい響きが、ホールいっぱいに広がるだろう。
 また、自由でエキサイティングなアンサンブルに期待したいのは、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。総勢9名のメンバーで奏でられるアレンジは、一体どんなものになるのか、そしてミュージシャン同士の間でどんな化学反応が起きるのか。さまざまな楽器の表現が混ざり合う、華やかな競演となるに違いない。
 各楽器界で際立つ存在感を放つ演奏家たち、そして、第一線で活躍する名手ぞろいの弦楽五重奏とパーカッションが集う、5周年にふさわしい豪華なステージとなりそうだ。

Vol.24

2020年1月17日(金)19:30開演

 来シーズンのフィナーレを飾るのは、こちらも、豪華な顔ぶれによる室内楽アンサンブル。ピアノの萩原麻未、ヴァイオリンの 彩奈、ヴィオラの安達真理、チェロの横坂 源、そしてコントラバスの加藤雄太と、ソリストとして活躍する若手奏者が揃い、ここでしか聴けない共演を繰り広げる。
 プログラムは、シューベルトにまつわる作品が中心の予定。学校の音楽の授業でもおなじみ、歌曲「魔王」から主題がとられた、エルンストの「シューベルト『魔王』の主題による大奇想曲」では、奏者のエネルギーがぶつかり合う、白熱した音楽に期待できそう。
 そして、ピアノ五重奏曲「ます」では、優れた腕前を持つ弦楽器奏者たちによる丁々発止のやりとり、アンサンブル能力に長けたピアニストを含む掛け合いと、シューベルトの不朽の名作を通して、室内楽の醍醐味を味わうことができるだろう。
 歌曲王と呼ばれたシューベルトが後世に残した、珠玉の美しいメロディ。一人一人際立った音色と表現力を持つ、気鋭奏者たちによるアンサンブル。若い5人がどんなトークを繰り広げるのかも含め、聴きどころたっぷりの公演となるだろう。

  • 萩原麻未

    ©Marco Borggreve

  • 辻 彩奈

    ©Warner Classics

  • 安達真理

  • 横坂 源

  • 加藤雄太

出演/曲目

 来シーズンも、ベテランや若手、そしてさまざまな編成のアンサンブルが登場する、バラエティに富んだラインアップ。これまでにない大編成のアンサンブルや、若手ソリストが集うピアノ五重奏への期待は大きい。また、「月の光」から始まる、シリーズならではの親密な空気は、ここでしか味わうことができないはず。全公演聴き逃したくない方には、シーズンセット券がおすすめだ。
 曲目は、これからまたさらに各組がアイデアを出し合い、決定次第発表していくということなので、引き続きご注目いただきたい。

プロフィール

取材・文 高坂はる香

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシック2019-2020シーズン セット券(4回連続券)

イメージ

シビックチケットのみの取扱い シビックチケット03-5803-1111

2018年12月9日(日)10:00~2019年3月31日(日)19:00までの期間限定販売

公演情報