~2018年12月6日(木)「夜クラシックVol.19」~The Rev Saxophone Quartet(サクソフォン四重奏)スペシャルインタビュー

サクソフォン四重奏 The Rev Saxophone Quartet

2013年結成。「REV」は音楽のもつ無限のエネルギーをメンバー4人が音として奏で、1つの方向へ疾走したい、という思いを込めてつけた名前で、名前の通り、サクソフォン四重奏の更なる可能性を追求している。現在、メンバーはそれぞれソリストとしても活躍しており、各人のキャラクターが違うからこそ4人がそろったときに新たな色をもつ唯一無二のクヮルテットになる。2017年にはデビュー・コンサートを収録したライブCDをリリース。
twitter:@the_rev_sq  Facebook:@The.Rev.SQ

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ソプラノサクソフォン 上野耕平 Kohei Ueno

茨城県東海村出身。8歳から吹奏楽部でサクソフォンを始め、東京藝術大学器楽科を卒業。指揮者の山田和樹氏には「耕平は1音を聴いただけで、ただ者ではないと思った!」またボストンポップスオーケストラの音楽監督であるKeith lockhartには「サクソフォンのこんな音聴いた事がない。目が飛び出るほど驚いた!」と言わしめた。第28回日本管打楽器コンクールサクソフォーン部門において、史上最年少で第1位ならびに特別大賞を受賞。2014年第6回アドルフ・サックス国際コンクールにおいて、第2位を受賞。常に新たなプログラムにも挑戦し、サクソフォンの可能性を最大限に伝えている現在、国内若手アーティストの中でもトップの位置をしめ、演奏活動のみならずメディアへの出演や、サックスカルテット【The Rev Saxophone Quartet】、吹奏楽【ぱんだウインドオーケストラ】のコンサートマスターとしても活躍中。ソロCDデビューは2014年、最新CDは無伴奏バッハ「BREATH」。ぱんだウインドオーケストラ、The Rev Saxophone QuartetのデビューCDもリリースしている。第28回出光音楽賞受賞。

オフィシャルサイト
http://uenokohei.com

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アルトサクソフォン 宮越悠貴 Yuki Miyakoshi

東京藝術大学附属高校を経て、同大学器楽科及び修士課程修了。在学中にアカンサス音楽賞、同声会賞受賞。
TV朝日「題名のない音楽会21」にて、故羽田健太郎氏、神奈川フィルハーモニー管弦楽団と共演。
MALTA氏率いるMALTA Jazz Big Band、MALTA 11 Orchestra plus Oneにレギュラー出演。JAZZへのアプローチも積極的に行う。
また、サクソフォン以外にフルート、クラリネットも演奏する。サクソフォンアンサンブルを中心に、作、編曲も手がける。
上原弘子、彦坂眞一郎、大城正司、貝沼拓実、須川展也、MALTAの各氏に師事。2009年度ヤマハ音楽奨学生。【The Rev Saxophone Quartet】アルトサクソフォン奏者。【Saxophone Quintet "Five by FIve"】リーダー。アトラムレーベルより「Five by Five」をリリース。

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バリトンサクソフォン 田中奏一朗 Souichiro Tanaka

福岡県大牟田市出身。9歳よりサクソフォンを始める。日本サクソフォーン協会第14回ジュニアコンクール第3位入賞。第11回九州音楽コンクール、第20回すみれ会音楽コンクール、第61回西日本国際音楽コンクールそれぞれで最高位を受賞。
2017年ヤマハ管楽器新人演奏会に出演。学業の傍ら全国各地で演奏活動も積極的に行う。また【Saxophone Quintet “Five by Five”】メンバーとしてデビューCD「Five by Five」をリリース。
サクソフォンを志垣美雪、田中靖人、林田祐和、冨岡和男、須川展也、大石将紀、室内楽を有村純親、大城正司、須川展也、林田祐和の各氏に師事。
東京藝術大学音楽学部卒業。同大学院に在学中。【The Rev Saxophone Quartet】【Saxophone Quintet “Five by Five”】バリトンサクソフォン奏者。

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テナーサクソフォン 都築 惇 Jun Tsuzuki

高知県出身。東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。これまでに下八川圭祐記念第36回高知音楽コンクール第1位、第6回秋吉台音楽コンクールサクソフォーン部門第2位、第34回日本管打楽器コンクール第4位、など多数受賞。2014年度より始動した東京芸術劇場による演奏家育成プロジェクト“芸劇ウィンドオーケストラアカデミー”のオーディションに合格し、一期生として研鑽を積む。現在はソロ・室内楽活動の他、国内プロ吹奏楽団やオーケストラのエキストラとしてコンサートやレコーディングに参加する。また『題名のない音楽会』をはじめとするテレビやラジオ、雑誌等メディアに出演するなど幅広いジャンルで活動を行なっている。サクソフォンを福田香苗、原博巳、大石将紀、須川展也の各氏に師事。室内楽を林田祐和、有村純親、須川展也の各氏に師事。またArnoBornkamp、KennethTse、Jean-Yves Fourmeau各氏のマスタークラスを受講。2018年より武蔵野音楽学園大学非常勤講師として後進の指導にあたる。【The Rev Saxophone Quartet】【ぱんだウインドオーケストラ】テナーサクソフォン奏者。

取材・文:高坂はる香 写真:星ひかる

四重奏ならではの表現の幅を堪能していただけます。

——夜クラシックにサクソフォン四重奏が登場するのは今回が初めてとなります。まずは、サクソフォン四重奏のための作品の魅力についてお聞かせください。

上野:シンプルにカッコイイと思っていただけると思います。とくにデザンクロのサクソフォン四重奏曲は、4つの個性ある音がぶつかってひとつになり、4人で吹いているとは思えない鳴りがする作品です。

宮越:デザンクロやべルノーのサクソフォン四重奏曲は、4本の楽器がとても効果的に使われ、一番良く鳴るツボがおさえられています。サクソフォンでしかできない音楽ですね。

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田中:楽器を知り尽くした作曲家が書いていますからね。強く豊かな響きの部分もあれば、淡い色の部分もあり、四重奏ならではの表現の幅を堪能していただけます。

都築:テナーサクソフォンを吹いている僕としては、内声のパートの立体感も大切に書かれていることに、サクソフォンのためのオリジナル作品ならではの魅力を感じます。同属楽器による四重奏という意味で、弦楽四重奏の編成と似ていると言われますが、独特の疾走感もサクソフォン四重奏ならではです。

上野:4本のサクソフォンがひとつになる音の圧は、生で聞いてこそ。1本でも、広い会場で隅々まで響くポテンシャルを持っている楽器ですが、それが4本になるわけですからね。それに、狭い会場だと抑えて吹く必要がありますが、文京シビックホールのように天井が高く広いホールでは、のびのびと演奏できます。僕自身も、当日が楽しみです。

——東京藝術大学の先輩と後輩で結成された四重奏団ですが、それぞれ最初に会ったときの印象は覚えていますか?

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都築:みんな高校生の頃には知り合っていましたね。上野さんは、前から上手な方として知っていましたが、実際話してみるとすごく気さくで驚きました。あと田中くんは、16歳のころは本当にかわいらしかった。今も宇宙人みたいな“ゆるふわキャラ”ですが、あの頃に比べると、大人になったなぁと(笑)。

田中:都築くんは、高校生の頃すごく奇抜な髪型をしていたよね。マッシュルームヘアに丸メガネで。彼は高知出身なのですが、僕は福岡の田舎から出てきて初めてそういう髪型の人を見たから、やっぱり高知はファッションセンスが進んでいるんだと思いました。宮越さんと初めて会ったのはアカデミーの講習会で、すごく無愛想だったのでちょっとこわかった(笑)。この時は上野さんも一緒だったのですが、どっちが話しかけに行こうかと相談したくらい。

宮越:そう、それで奏ちゃんが最初に話しかけてくれたんだよね。本当は僕だってみんなと仲良くなりたいんですよ。

上野:そうは見えなかったよ(笑)。

宮越:上野さんは、中学生の頃に参加したあるコンクールで、前年の入賞者としてのゲスト演奏を聴いたのが最初。自分よりたった一歳上で、こんなにうまく吹けるのかと本当に驚きました。

上野:僕も宮越くんのことは、中学二年生の頃にソロのコンクールで聴いた演奏が強烈に印象に残っていますよ。うまいのはもちろんだけど、とにかく音が大きいことに驚いて。そのあと件の講習会で会って、あの宮越くんだと思って見ているんだけど、全然みんなの輪に入ってこない。いざ話しかけてみたらやたら無愛想で、第一印象は良くなかったです(笑)。でもそうやって、4人ともコンクールや講習会で顔をあわせる中で仲良くなっていきました。僕らが全員、東京藝大の1年から3年に在籍していたあるとき、サクソフォン四重奏での演奏機会があって、ぜひこの4人でやりたいと声をかけました。

みなさんで聴きに来てほしいです。

——今では仲良しのみなさんですが、今後このメンバーでやっていきたいことはありますか?

上野:サクソフォン四重奏の良さをもっと伝えていきたいですね。それぞれ異なるキャラクターの楽器が、ぶつかったり、融合したりしながら演奏するおもしろさが、他の楽器より一層よくわかると思います。「夜クラシック」公演の頃には、新しいアルバムも発売されます。新レパートリーなど、新たなチャレンジをたくさんしていますので、皆さんに聴いていただきたいです。

——それぞれご自身の楽器の好きなところを教えてください。

上野:よく、楽器は小さいほど音程を取るのが難しいといわれますが、ソプラノサクソフォンもやはり扱いづらい楽器です。それをクリアしたうえで、思い通りの表現をできたときの喜びは大きいですね。天から降るような高音、いい意味で地に足の着いていないような音を出せるのが魅力だと思います。

宮越:アルトサクソフォンの魅力は、一つで二度三度おいしいところですね。真ん中の音域を担当するので、主な役割はハーモニーを作ることですが、時にはメロディや対旋律を吹くこともあります。場面ごとにいろいろな役割を果たすことができることが、とにかく楽しいです。

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田中:バリトンサクソフォンには、音楽の一番下の骨組みを作り、舵取りをする役目があります。ベースラインを吹きながら曲のテンションを導く作業は、おもしろくて好きです。また、楽器が大きいぶん、太い音から細い音まで、表現の幅も一番広いと思います。嫌いなのは、重いところです(笑)。

都築:テナーサクソフォンは、弦楽四重奏でいうとヴィオラの役割を果たします。内声の働きでメロディをうまく操ることができるので、やりがいがあるパートです。それから、自分自身の声質がテノールなので、この、高からず低からずという絶妙の音域がしっくりきて、歌う表現もスムーズに演奏できます。難しい楽器ですが、飽きません。

——最後に、来場者のみなさんへのメッセージをお願いします。

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都築:クラシカルな作品から、みなさんご存知のジャズの名曲まで、一夜でさまざまな音楽をお届けします。お腹いっぱいという気持ちでホールを後にしていただけると思いますので、楽しみにしていてください。

田中:僕らが得意としているのは、ライブ感のよさを届けること。クラシック作品の中で、お互い仕掛け合うからこそ生まれる新鮮な音楽を楽しんでほしいです。

宮越:プログラムの振れ幅が大きく、どれも楽しんでいただけると思います。あとは、サクソフォン四重奏で各奏者がどんな役割を果たしているのか、メロディとベースはもちろん、内声を担うアルトやテナーが奏でるフレーズにも注目してほしいですね。

上野:サクソフォン四重奏を聴いたことがないという方もどんどん誘って、みなさんで聴きにきてほしいです。絶対、好きになってもらえると思います!

小曽根 真 スペシャルメッセージ

プロフィール

取材・文 高坂はる香

音楽ライター、編集者。大学院でインドのスラム支援プロジェクトを研究。その後2005年よりピアノ専門誌の編集者として、ピアニストや世界の国際ピアノコンクール等の取材を行う。2011年よりフリーランスとして活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体への寄稿のほか、「クラシックソムリエ検定公式テキスト」の編集などを手掛ける。
HP「ピアノの惑星ジャーナル

夜クラシックVol.19

2018年12月6日(木)19:30開演 文京シビックホール  大ホール

公演情報

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