バレエ・エデュケーション・プログラム in Bunkyo 牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』【牧阿佐美バレヱ団】青山季可、菊地研、阿部裕恵、清瀧千晴 29日/30日公演、主役2組にインタビュー

29日(土)15:00公演

牧阿佐美バレヱ団 青山 季可 Kika Aoyama

橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、AMステューデンツ、英国ロイヤル・バレエ・スクール、ジョン・ノイマイヤー・ハンブルグ・バレエスクールで学ぶ。9歳で牧阿佐美バレヱ団「くるみ割り人形」のクララ、11歳で「ドン・キホーテ」のキューピッドを踊り、注目を集める。1993年、全国舞踊コンクールで1位受賞。2001年牧阿佐美バレヱ団に入団。2006年「白鳥の湖」で主役デビュー。「ロメオとジュリエット」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「ジゼル」「ライモンダ」「三銃士」「リーズの結婚」「ドン・キホーテ」「ラ・シルフィー ド」等、数多くの作品に主演。安定した抜群のテクニックと華やかな存在感で多くのバレエファンを魅了している。2012年中川鋭之助賞、2016年服部智恵子賞を受賞。

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牧阿佐美バレヱ団 菊地 研 Ken Kikuchi

10歳からバレエを学び2001年牧阿佐美バレヱ団に入団。世界的振付家ローラン・プティが牧阿佐美バレヱ団に振付けた「デューク・エリントン・バレエ」のソリストに16歳の菊地を抜擢、一躍注目を集めた。「くるみ割り人形」「ドン・キホーテ」「リーズの結婚」「ラ・シルフィード」「白鳥の湖」「ノートルダム・ド・パリ」、新国立劇場バレエ団「椿姫」に主演する他、「ノートルダム・ド・パリ」のフロロ、「ライモンダ」のアブデラクマン、「眠れる森の美女」のカラボス等を巧みに演じる。ボリショイ・バレエ学校短期留学を経て、2002年こうべ全国洋舞コンクール男性ジュニアの部で1位受賞。2004年フランスとロシアで上演されたローラン・プティのガラ公演「創造の道程」に、日本人で唯一人参加。2006年舞踊批評家協会賞・新人賞受賞。2017年、第37回ニムラ舞踊賞受賞。

30日(日)15:00公演

牧阿佐美バレヱ団 阿部 裕恵 Hiroe Abe

橘バレヱ学校仙台教室、日本ジュニアバレヱ、AMステューデンツ、新国立劇場バレエ研修所で学ぶ。2016年、牧阿佐美バレヱ団に入団。入団2年目の昨年は「ドン・キホーテ」「くるみ割り人形」に主演。確かなテクニックと溌剌とした踊りを披露し、今後の活躍に期待と注目が集まっている。埼玉全国舞踊バレエコンクール・クラシックバレエ二部をはじめ多くのコンクールで第1位を受賞している。

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牧阿佐美バレヱ団 清瀧 千晴 Chiharu Kiyotaki

橘バレヱ学校、日本ジュニアバレヱ、AMステューデンツ、ボリショイ・バレエ学校などで学び、牧阿佐美バレヱ団に入団。「くるみ割り人形」「ドン・キホーテ」「リーズの結婚」「ロメオとジュリエット」「ライモンダ」などの主役、「ノートルダム・ド・パリ」のフロロ、「リーズの結婚」のアランなどを踊り、音楽性豊かな表現力、軽やかで美しい跳躍などダイナミックな技で多くの観客に支持されている。2004年、埼玉全国舞踊コンクール・成人の部第1位。2007年、全国舞踊コンクール・クラシックバレエ一部第1位。2012年、スワン新人賞(橘秋子記念財団)受賞。

※参照:新聞掲載記事はコチラ

取材・文:西本勲 撮影:インタビュー時撮影/友澤綾乃、舞台写真/鹿摩隆司、山廣康夫 (協力:「Confetti(カンフェティ)9月号」)

誰もが知る楽曲、群舞の美しさ、ストーリー展開――バレエとしての魅力がたっぷり詰まった『白鳥の湖』

——皆さんにとって『白鳥の湖』とはどんな作品ですか?

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青山:『白鳥の湖』は、私が牧阿佐美バレヱ団で主役デビューさせていただいた作品です。草刈民代さんをはじめとしたバレヱ団の先輩方が踊っていらっしゃるのをずっと観ていましたし、バレヱ団にとっても大切なテリー・ウエストモーランド先生(※プロフィール原稿下欄参照)が振り付けた作品でもあるので、とても光栄に思いました。その後も、踊らせていただくたびにとても難しいと感じる作品の1つです。

菊地:バレエに詳しくない方でもわかるくらいメジャーな作品で、憧れもありましたから、初めて踊らせていただいたときの喜びは今も忘れません。男性(王子)の成長を軸に進んでいく数少ないバレエで、僕が一番好きな作品でもあります。今まで経験を積んできたからこそ、一人の男性として成長していく王子を細やかに演じることができるようになったと感じています。

阿部:小学生の頃、牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』を客席で観て、泣きそうなくらい感動したのを覚えています。その舞台に主役として出させていただくのは、もちろん緊張もありますが、とても嬉しいです。

清瀧:小さい頃から“いつかは『白鳥の湖』の王子を大きな舞台で演じられたらいいね”と言われていて、やっと今回その機会が来ました。オーケストラの演奏、豪華な装置と衣装が揃った素晴らしい舞台に立てるのは光栄ですし、すごく楽しみにしています。

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——『白鳥の湖』の魅力とは何でしょうか?

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第4幕より

青山:美しいコール・ド・バレエ(群舞)や、華やかな大広間の花嫁選びのシーンなど、いろいろな場面が盛り込まれていて、最初から最後まで楽しんでご覧いただける作品です。特に、牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』は2幕にマイム(バレエの表現方法:言葉を身振り手振りで表現する方法)があって、そこでの王子に対する心情表現が私はとても好きです。4幕も心の繋がりを簡潔に表現できる演出になっていますね。

菊地:視覚的な美しさや感情表現の繊細さがある中で、ものすごい激しさもある。とても見どころの多い作品なので、誰もが知っているというのも納得できますし、初めて観るバレエにもいいんじゃないかと思います。

阿部:清楚なオデットと妖艶なオディールという2役を同じダンサーが踊るのも見どころの1つです。私自身、小さい頃に観たときは違う人が踊っていると思ったほどでした。それくらい違う雰囲気を届けられるように私も頑張ります。

清瀧:多くの方が知っている楽曲と、美しい群舞の組み合わせが百何十年も受け継がれてきた……そこが一番の魅力だと思います。そして、全4幕の中で王子が成長していく過程を感じ取ることができるストーリー展開も素晴らしいです。

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清楚なオデット

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妖艶なオディール

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第2幕より 美しい群舞

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第3幕より

キャリアも持ち味も異なる、主役ペア2組の魅力をそれぞれ楽しんで

——今回は2日間で異なる主役ペアを楽しめるのも嬉しいところです。同じ役を演じるダブルキャストの相手についてコメントをいただけますか?

青山:裕恵ちゃんは、安定したテクニックが何よりも私たちバレヱ団の自慢で、安心して観ていられますし、年齢ならではのフレッシュなパワーもあります。今回は全幕上演ということで、それだけ重みのようなものも求められますが、彼女なら練習を重ねることでそういうところも出していけるだろうし、もっと素敵な裕恵ちゃんを観られると思います。

阿部:『白鳥の湖』に限らず、季可さんの踊りを観ているといつも引き込まれてしまって……それくらい役になりきるところがすごいなって思っています。私には、“白鳥”の繊細さがとても難しいのですが、季可さんは本当にそのままでいいっていう美しさがあるので、私も参考にして、良いところは真似ていけたらなと思います。

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2013年公演 第4幕より

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清瀧:研さんには、やはり場数を踏んだダンサーだからこそ出せる深みを感じます。季可さんとは何度も一緒に主役を演じているので、お互いの理解度が高く、とても息が合っています。そういう女性とのパートナリングという点で学ばせてもらったことも多く、今回も安定した深みのある舞台を観せてもらえるのではないかと思います。

菊地:清瀧君は、今回が主役デビューというのが不思議なくらいで、特に跳躍力と音楽的なセンスは“白鳥”向きだと思います。こちらも取り入れられるところは取り入れたいし、僕自身それを楽しみにしています。裕恵ちゃんの高度なテクニックと併せて、僕たちのペアとは違った魅力の舞台をお楽しみいただけるのではないでしょうか。

その日、その場でしか味わえない生の舞台ならではの感動を『白鳥の湖』で体感してほしい

——では最後に、読者の皆様に向けてメッセージをお願いします。

青山:“白鳥”を踊らせていただくのは久しぶりなので、大切に踊りたいです。白という色を表現するには、余分なものをすべて削ぎ落とさないといけないと思うので、“白鳥”としての動きの美しさや、その深い哀しみの表現に集中して臨みたいと思います。

菊地:バレエは言葉を使わないからこそ、観る人にダイレクトに伝わるものがあると思います。人によって感じるものは違っても、自分自身で受け止めた何かが、大きな感動につながるのだと。『白鳥の湖』で、そんなバレエの醍醐味にぜひ触れていただきたいです。

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阿部:『白鳥の湖』は、テレビなど映像で目にする機会も多いと思いますが、生で観ると迫力が全然違います。特に2幕と4幕のコール・ドの場面は、ぜひ客席で観ていただきたいです。先ほど話した1人2役の難しさもしっかり表現できるよう頑張ります。

清瀧:牧阿佐美バレヱ団の『白鳥の湖』は、本当に豪華絢爛で品格に満ちている一方で、跳躍や回転など、高度なテクニックを披露するダイナミックな場面も満載です。その日、その場でしか体感できない非日常的な幻想の世界を、ぜひ客席でお楽しみください。

——ありがとうございました。

※このインタビュー記事は「Confetti(カンフェティ)9月号」掲載のインタビューとして実施したものを再構成しました。

<文中注釈>

※テリー・ウエストモーランド(~1985年)
英国ロイヤルバレエ団でソリストとして活躍の後、74年より常任スタッフ、教師に。世界各国のバレエ団で教師、振付師として多くの業績を残す。

プロフィール

取材・文 西本 勲(にしもと・いさお)

ライター・編集者。
1990年〜2004年まで音楽雑誌の編集に携わり、以降はフリーランスとして主に音楽や楽器奏法に関する執筆・編集に従事。
2013年からは演劇など舞台芸術全般のインタビュー記事も多く手がける。

バレエ・エデュケーション・プログラム in Bunkyo 牧阿佐美バレヱ団 『白鳥の湖』

2018年9月29日(土)15:00開演 9月30日(日)15:00開演 文京シビックホール  大ホール

公演情報

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