特集  ~2016年2月26日(金)「夜クラシックVol.8」 朴 葵姫 (ギター)&奥村 愛(ヴァイオリン)スペシャルインタビュー

ギター 朴 葵姫 Kyuhee Park

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韓国生まれ。日本と韓国で育つ。3歳でギターを始め、荘村清志、福田進一、A.ピエッリ各氏に師事。東京音楽大学を経て、現在ウィーン国立音楽大学で研鑽を積んでいる。ドイツ、ベルギー、スペイン、韓国他多くの主要国際ギターコンクールで優勝・受賞。日本、韓国、ヨーロッパで演奏活動をしている。録音は「スエニョ~夢」、「ソナタ・ノアール」(フォンテック)、「スペインの旅」、「最後のトレモロ」、「サウダーヂ-ブラジルギター作品集-」(日本コロムビア)など、いずれも異例のヒットとなり、レコード芸術誌特選盤となる。NHKでのリサイタル放送が話題となるなど、今後の活躍が期待される、今注目のギター界の新星。12年カーネギーホール(ワイルホール)での米国デビューを果たし、世界的にも注目を集める。現在、ヨーロッパ、日本、韓国などで演奏活動を行っており、会場中を惹きつける音楽性と、とりわけ美しいトレモロ奏法の技術の高さは各地で絶賛されている。15年5月新譜「FAVORITE SERECTION」をリリース。

CD「サウダーヂ」特設ページ:http://columbia.jp/kyuhee/index.html

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ギター 朴 葵姫 Kyuhee Park

7歳までアムステルダムに在住。桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースで学ぶ。辰巳明子、ライナー・ホーネックの各氏に師事。第48回全日本学生音楽コンクール全国大会中学生の部第1位、第68回日本音楽コンクール第2位、他受賞多数。これまで国内の主要オーケストラとの共演をはじめ、04年にはP.ガロワ指揮シンフォニア・フィンランディア日本ツアーへの出演など、海外オーケストラとの共演も重ねる。富士山河口湖音楽祭に毎年出演。CDは02年『愛のあいさつ』でデビュー。最新CDは2013年11月発売の「With a Smile~微笑みをそえて」(エイベックス・クラシックス)。親しみやすいプログラミングと自然体なトークによるリサイタルは各地で大好評を得ている。一児の母としての経験を生かし、自らのプロデュースによる親子向け公演を数多く手掛けている。テレビ・ラジオ等への出演も多く、多彩な活躍で注目されている。桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。佐藤製薬のトータルスキンケアブランド「エクセルーラ」のイメージキャラクターをつとめている。

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取材・文:オヤマダアツシ 写真:星 ひかる

もっと新しい面も見えてきて、どんどん可能性が広がっていく

——ヴァイオリンとギターによるコンサートは東京でも意外に少ないと思いますが、お二人の共演も新鮮ですね。

朴さんとは一度だけコンサートをご一緒しましたが、もともとは文京シビックホールさんから「ぜひお二人で」とお声をかけていただいたのがきっかけで共演が実現しました。おかげでギターとの共演でないと演奏することができなかったジュリアーニの作品などにも出会えましたので、今回の『夜クラシック』をとても楽しみにしています。

私もご一緒させていただいた時、自分の楽譜から目が離せないほど一生懸命だったのですが、うまく合わせなくてはいけないタイミングなども愛さんにリードしていただき、いろいろな楽器や演奏家の方とアンサンブルをされてきた方は素晴らしいなと実感しました。

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私は演奏するにあたって事前にあれこれと決めるのが苦手なのです。リハーサルでもあまり「ここは絶対にこうで、このタイミングはこうしないと」と厳しい要求をすることがなく、共演する相手の演奏やコンサートの雰囲気に合わせて音楽も変化していってよいと思っています。

私も、どちらかといえば相手の方の演奏を聴きながらそれに合わせていくタイプですから、愛さんと同じです。ですからリハーサルの時も話し合うことが少なく、お互いの音楽を聴き合って確認しようという雰囲気でしたね。

同じ姿勢だからこそ初共演でもうまくいったのだと思いますし、おそらく共演を重ねるたびにもっと新しい面も見えてきて、どんどん可能性が広がっていくのでしょう。今回の『夜クラシック』でお聴きいただくプログラムは、私にとってチャレンジと言えるくらい新鮮な曲もありますが、朴さんとでしたら安心して演奏できます。

ヴァイオリンとギターで演奏すると弦楽器同士の調和が生まれます

——プログラムはお二人での演奏を中心に、それぞれがお弾きになるソロの曲もあり、バラエティ豊かな選曲になっています。その中でもジュリアーニ作曲の「グランド・ソナタ」は、あまり知られていない作品だと言えそうですね。

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2人が共演する作品の中では特に聴き応えのある曲ですし、聴いていただければ素晴らしい曲だということをわかっていただけると思います。

これは私が選曲をしました。ジュリアーニはギターの作曲家であり、ギター・ソロの曲や室内楽曲などをたくさん残しています。この「グランド・ソナタ」はもともとフルートとギターのために書かれており、私が勉強しているウィーン国立音楽大学でも室内楽のレッスンに使われることが多いですね。ジュリアーニはイタリア生まれですが、ウィーンで活躍していたため、モーツァルトやベートーヴェンと同じように今でも多くの人に愛されています。ギターのパートは、ほぼ弾きっぱなしですし技巧的にもかなり難しい曲ですけれど、とても魅力的な作品ですので、初めて聴くという方でも楽しんでいただけると思います。

もともとヴァイオリンとギターのためのオリジナル作品自体が少なく、フルートからの編曲であってもレパートリーが増えることになるので嬉しいです。コンサートではピアソラの「タンゴの歴史」もお聴きいただきますが、この作品も原曲はフルートとギターのために書かれていますので編曲版ということになります。同じく、ヴァイオリンとギターで演奏すると弦楽器同士の調和が生まれますし、最初からこの組み合わせで作曲されていたのではないかと思えるほど自然ですね。これまで「リベルタンゴ」や「グランタンゴ」といったピアソラの名曲を弾いてきましたが、そうした曲と比較しても違和感もありません。モンティの「チャールダッシュ」と同じくらい有名なヴァイオリンの曲になるよう、何度も演奏して定着させたいと思っています。

——ソロでは、奥村さんがバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番」、朴さんがタレガの「アルハンブラの思い出」を演奏されますが、それぞれが楽器の魅力をアピールできる曲ですね。

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ヴァイオリニストにとってバッハの曲は欠かせない存在です。試験やコンクールでも絶対に弾く曲ですし、特に今回演奏する「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番」は、最近になって弾く機会が多くなりました。バッハを演奏するときは教会の中で弾いている光景をイメージすることが多く、天に向かって音楽を届けるような気持ちで演奏しています。私の楽器は1738年製なのですが、ちょうどバッハが生きていた時代(1685年~1750年)に当たりますから、この楽器でバッハを弾くことが特別のように思えてきます。そうした歴史的な背景や、音楽が長い時間をかけて受け継がれてきたことなども感じていただけたらうれしいです。

ギタリストにとってもバッハは大切な作曲家ですし、ヴァイオリンやチェロのために作曲された無伴奏作品を編曲し、多くのギタリストが演奏しています。私はまだ「シャコンヌ」をコンサートで演奏しているくらいですが、愛さんが演奏する「ソナタ第1番」にもこれから挑戦していきたいですね。今回のコンサートでは、お客様からのリクエストがとても多いタレガの「アルハンブラの思い出」を演奏しますが、美しいトレモロ奏法で有名な作品です。私は演奏する時、風景や映画の一場面を連想することが多いのですけれど、『夜クラシック』がある2016年2月頃はスペインに短期留学していますので、現地で見てきたもののイメージなどを演奏に反映したいと思っています。

スペインでの体験は、ぜひトークにも生かしてくださいね。

愛さんはトークがお上手で、いろいろな話題を楽しくお話ししますよね。私はいつも曲の紹介をしたり、「今日はいい天気ですね」といった挨拶程度のことしか話せませんから、今回はいろいろなお話しができるよう努力してみます。

いろいろなものを見たり感じたりしながら、音楽も変化していく

——お忙しい中、音楽から離れたときに楽しんでいる趣味などはございますか。

私は一眼レフ・カメラで写真を撮ることですね。あるギターコンクールで優勝したときに自分へのご褒美としてカメラを買い、愛用しています。主に風景などを撮影していますが、CDのブックレットにも使っていただいたり、ハガキにして友人に送ったりもしています。いつかコンサートで写真をバックに演奏したり、ホールのロビーなどに展示して「今日はこんなイメージで選曲しています」とお客様に伝えることができたらいいですね。それから最近では、革細工で身の回りの小物などを作るのが楽しくなっています。

私はあまり趣味と言えるようなことがなかったのですけれど、NHKの大河ドラマで注目された“黒田官兵衛”のゆかりの地を船で回る、というツアーのお仕事があり、船内で演奏をしたことがあったのです。それがきっかけで歴史の面白さに気づき、特に訪れた場所にあるお城を見ることが好きになりました。そうした史跡などでは歴史上の人物に触れることもできますし、クラシックにおいても、音楽を通じて歴史上の作曲家たちに触れられるわけですから、そういう意味で共通する面白さもあるなと思います。

いろいろなものを見たり感じたりしながら、自分の音楽も変化していきますね。

(そういう意味で)今度の『夜クラシック』は、2016年を迎えた二人の最初の競演となりますので、変化していく2人の最新の音楽をお楽しみいただけるでしょう。

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プロフィール

取材・文オヤマダアツシ

音楽ライター。音楽家のインタビュー記事、コンサートのプログラムノート等を中心に執筆。
『ぶらあぼ』『ぴあクラシック』『モーストリー・クラシック』『ショパン』等で記事を執筆するほか、クラシック音楽の魅力を伝える音楽講座なども担当。
著書に『ロシア音楽はじめてブック』(アルテスパブリッシング刊)。共著は多数。

夜クラシックVol.8 朴 葵姫 奥村 愛 注目のふたりが奏でる麗しく…そして、情熱的な弦の響き

2016年2月26日(金)19:30開演 文京シビックホール 大ホール

公演情報

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