特集 ~豪華メンバーで贈る、一夜限りの特別講演!~ 指揮:ユーリ・テミルカーノフ スペシャルインタビュー &出演者メッセージ

ユーリ・テミルカーノフ

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芸術監督・首席指揮者 ユーリ・テミルカーノフ

 ユーリ・テミルカーノフは間違いなく現代の巨匠の一人であり、2009年のノーベル賞授賞式演奏会ではロイヤル・ストックホルム・フィルの指揮者に招かれている。
 1938年12月10日、コーカサス生まれ。レニングラード音楽院指揮科でイリヤ・ムーシンに師事。1966年第2回全ソ指揮者コンクールで優勝。1967年ムラヴィンスキーに認められ、アシスタント指揮者として招かれる。1968年からレニングラード響(現サンクトペテルブルグ響)の首席指揮者・音楽監督、1976年~1988年キーロフ歌劇場(現マリインスキー歌劇場)の芸術監督及び首席指揮者を務めた。
 1978年にはロイヤル・フィルを指揮してロンドン・デビュー。1992年~1998年同楽団の首席指揮者を務め、1998年には名誉指揮者となる。1988年、ムラヴィンスキーの逝去後、楽団員の選挙によってサンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団(旧レニングラード・フィル)の音楽監督・首席指揮者に選出され、現在に至る。2000年~2006年ボルティモア響の首席指揮者・音楽監督も務めている。
 また、1996年にはローマでの国連50周年記念ガラ公演を指揮。2002年、2008年にはイタリアでプレミオ・アッビアティ賞を受賞。この快挙により、2013年ヴェルディ生誕200周年記念フェスティバルまでパルマ王立劇場の音楽監督に就任。 BMGと専属契約を交わし、サンクトペテルブルグ・フィル、ロイヤル・フィル、NYフィルとのCDをリリース。1999年より毎年サンクトペテルブルグで「“芸術広場”音楽祭」を開催している。

指揮:ユーリ・テミルカーノフ インタビュー

サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団について

 歴史のあるオーケストラであれば例外なく、伝統はとても大切なものです。サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団はロシアで生まれた最初のプロフェッショナルなオーケストラであり、偉大な音楽家たちと共演してきました。ロシア国内だけではなく、ヨーロッパ各国からも高名な音楽家が来てくれたのです。たとえば、チャイコフスキーが亡くなる9日前に交響曲第6番「悲愴」の初演を指揮したのは、このオーケストラでした。

 私がこのオーケストラの指揮者に無記名の楽員投票で選ばれたとき、私たちを取り巻く環境は大混乱していました。私が最初にしたことは政府の高官に「文化のない国で産業は発展しない」と訴えることでした。私たちがするべきことは、古き佳き時代の精神を忘れず、後世へと引き継ぐことだと考えています。

ロシア音楽と、マーラーについて

 私自身がこのオーケストラと多くの作品、ことにロシアの作曲家の作品を演奏してきて感じるのは、ロシアの作曲家たちは「聴衆のひとりひとりに話しかけて、自分の感情や、ときには悩みまでも思いきりぶつけてくる」ということです。心をさらけ出すことを恐れず、むしろ聴衆をかけがえのない友人のように思っているのではないでしょうか。

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 ラフマニノフの音楽を例に挙げれば、彼の音楽はあまりにも美しすぎて、それゆえシリアスに受け取ってもらえないという悲劇を生んでいます。しかし、よく耳を傾けてみてください。申し分がないほど美しいメロディの中に、いつも大きな悲しみが宿っていることに気がつくでしょう。彼が愛したロシアの民謡も短調のメロディが多く、陽気になったとしてもすぐに悲しい雰囲気へと戻ってしまうのです。ラフマニノフの作品には短調の名作が多いのですけれど、それは彼の本質です。交響曲が勝利を祝うような長調でフィナーレを迎えたとしても、残された響きの中には悲しみがあり、それが聴衆の皆さんへ語りかけます。言うまでもありませんが、私たちはその悲しみを伝えることができるような演奏をしています。

 マーラーの音楽にも共通するところがありますね。現在では世界中で演奏されていますが、以前は「行進曲も出てくるしストリート・ミュージックみたいだし、レストランのがやがやした雰囲気を思わせる部分もあるし……」と考えられていた時代もありました。しかしそれらは表面的なことであり、じっくり接すれば「その裏ではとても恐ろしいことだってあるんだよ」ということを教えてくれます。それを理解すれば、音楽がより深く聞こえてくるはずなのです。

テミルカーノフ スペシャルインタビューメッセージ

特別公演を彩る ソリスト陣からもメッセージをいただきました

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森 麻季(ソプラノ)

 テミルカーノフ氏75歳の特別なコンサートに出演させていただけることに心から感謝しています。テミルカーノフ氏の音楽への深い愛情と、しなやかに強く情熱溢れるエネルギーは、多くの方々に元気と勇気と幸せを与えてくださることと思います。

 1回限りの特別なコンサートで、私もそのオーラを感じながら、精一杯歌わせていただきます。お一人でも多くのお客様にお会いできますことを心より楽しみにしています。

森 麻季

坂本 朱(アルト)

 『歌うこと』は、「音」と「言葉」を多様に紡ぎ続けながら、紡ぎ合わせた何かを自由な空間へ放つ
こと、だと考えています。
 「言葉」=言の葉であるのなら、言の樹、言の幹、言の根、言の土があるはずです。
 マーラー交響曲第2番《復活》のスコア(総楽譜)を前にして、私は今、言の樹を全身全霊で
感じています。
 それは常に変化し、その姿をかえてゆきます。幹、根、土が変化しているように。。。

O Schmerz! du Alldurchdringer!
(おお、あらゆるものに浸み渡る苦痛よ)
Dir bin ich entrungen!
(「私」はおまえから身を離した!)

 この「私」こそが、“わたし”。 完全な明け渡しの先に湧き上がる、きれいな生命力こそが
“わたし”なのです。《復活》の言の樹は、私にそう教えてくださいました。

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 テミルカーノフ氏との共演は2回目になります。静かな誠実さの中に、実に真摯な、熱い、そして厳しい愛を持っていらっしゃる
素晴らしい指揮者です。
 サンクトペテルブルグ・フィルの、壮大な、深い音色での演奏の中、言の樹はまた命を蘇らせ、大樹へと成長してゆくのでしょう。
私が、一握りの言の土で在るようにと願い、お客様とお会いできることを本当に楽しみにしています。

坂本 朱
2013年初秋
イタリアの自宅にて

ユーリ・テミルカーノフ指揮 サンクトぺテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団

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2014年1月24日(金)  19:30開演 

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